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ワタミ清水邦晃社長「居酒屋市場に淘汰が起こる」――ニューノーマル時代をいかにして生き残るか「近づけない、集めない」 時代を生き抜く、企業の知恵(2/7 ページ)

» 2020年11月13日 10時33分 公開
[武田信晃ITmedia]

カミチクグループと業務提携

――焼肉食べ放題の「かみむら牧場」の新規出店に加え、居酒屋から「焼肉の和民」へと業態を変更します。同ブランドを運営するにあたり(食肉の加工や卸売などを手掛ける)鹿児島のカミチクグループと業務提携を発表しました。鹿児島というと、まず思い浮かぶのは「黒豚」ですが、どういった経緯から提携をしたのでしょうか?

 渡邉美樹会長が参議院時代、クールジャパン戦略推進特命委員を務める中で「日本の和牛をどうにか海外に発信したい」という思いがまず、ありました。

 桑原豊前社長はカミチクグループの関連会社の顧問を務めていたことから、カミチクの上村昌志社長と渡邉美樹会長とが出会う機会があり、そこで意気投合した経緯があります。2人が出会ったのは新型コロナウイルスの感染拡大前ですが、「回転寿司を焼肉店にしたら面白いのではないか?」「家族が喜んでくれる場所を作れるのではないか?」というアイデアが出ました。

 当社はコロナ前から「ハレの場」を提供したいと考えてきました。一方、カミチクさんは、私たちの想像を超える牛を育てる環境を整えています。肉に対する深い愛情を感じ、双方の思いが合致した形です。

――コロナ前という話が出ました。もともと居酒屋の業態は厳しいという認識で、業態を変えようと考えていた。その折に、コロナの感染拡大がその動きを加速させたということでしょうか?

 コロナ前の売上は前年を超えてきていて調子が上がっていたのですが、もう1本柱が欲しかったのです。以前から、かみむら牧場をオープンする予定は決まっていました。一方、焼肉の和民については、コロナ禍によって出店が加速されたのは事実です。コロナ前から焼肉の業態を作ろうとしていまして、それが結果的にコロナ対策と同じような(特急レーンや料理配膳ロボットなども導入した)非接触型の業態だったということです。

phot 肉や料理は”特急レーン”に乗って運ばれる(ワタミ提供)

――料理配膳ロボットはコロナ対策にもなりますね。

 最初は特急レーンだけを導入する予定でした。その後、やりとりをしているうちに、配膳に時間がかかることや、焼肉は皿の数がどうしても多くなるので下げるのにも時間がかかることが分かりました。コロナが広がり、「店員と接触するのは避けたい」というニーズもあり、導入を決めました。ロボットを導入すると人件費1人分のコストを削減する効果があり、リース料含めてもプラスになります。会社にも、お客さまにもメリットがあります。いろいろと模索する中で「これもできる、あれもできる」と考えてきた結果ですね。

――居酒屋業態は宴会の方が収益をあげられる一方、今は少人数での利用が多くなっています。それぞれの客単価はどのように見ていますか?

 本当はワクチンが早くできて元に戻って欲しいですし、昔のように人が集まってコミュニケーションを大切にする場面を提供したいです。宴会ですと3000円〜3500円、フリーで入られても2500円くらいでした。

 売上が前年比の7割を達成すると居酒屋として(利益は)プラスマイナスゼロというレベルになります。だから7割を達成するために、いかにして経営を改善できるかにかかっています。客数で補ってコロナの危機を乗り越えたいところです。

 予算上では下期(=2020年3月末まで)までに7割まで戻すよう計画しています。10月は上がり基調ではあるものの、第3波が来たり、お店でコロナが発生したりすることも懸念されますので、最善を尽くしていきます。逆に言えば、7割というのはお客さまの感染リスクを下げることにもつながってくると考えています。

phot ロボットを導入すると人権費1人分のコストを削減する効果があり、リース料含めてもプラスになるという(日本システムプロジェクトのリリースより)

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