野澤氏によれば「応募者の年収については、大きく幅があるため一概には言えない」というが、中央値は1000万円程度といったところだろうか。
なぜ、LSPを構築したのだろうか。背後にある思想はこうだ。人生の折り返し地点である50歳を過ぎたあたりから、業務上のスキルや知識の部分で“賞味期限切れ”になったと感じ、目標ややる気を失う人がいる。ただ、生活があるので、ふつふつとした思いを抱えながら、不本意な形で会社に残留する人は多い。
「人生100年時代」などといわれるなか、「老後資金2000万円問題」が話題になったように、定年後の長い老後を安心して暮らすためには、会社にしがみつくだけではない、“攻めの選択”も必要になる。これまで培ったスキルや知識をアップデートし、自分自身の力で、活躍する場を切り開くことも考えなければならない。
とはいえ、早期退職制度を利用して独立し、新たに事業を興すのはリスクが大きい。LSPは、「早期退職」と「定年」以外の中間的な選択肢を会社側で用意したものと思えばいいだろう。
例えば、電通が2015年に実施した早期退職では、300人の募集人数に対し、応募者数は104人だった。しかし今回のLSPには、230人の応募があった。この数字からも、チャレンジしたいと思いつつも、家族や将来のリスクを考えると、早期退職では踏ん切りがつかなかった社員が多かったということではないだろうか。
LSPに応募したある社員は、次のように語る。「LSPが不安を払拭してくれた。リスクを考えると、やりたいことがあってもチャレンジできなかった。固定報酬をもらいながらチャレンジできるのはありがたい」
230人の応募者の職種については「職種も年齢も偏りなく応募いただいた。コピーライターやプランナーのようなクリエイティブ系だけでなく、営業、人事、総務、経理といった幅広い分野にわたる」(山口氏)と明かす。野澤氏によると、230人のうち3割程度が退社後に個人事業主としてではなく法人を立ち上げるそうだ。また、自宅で開業するメンバー、事務所を構えるメンバーなど、多様な形態で業務を行うことになるという。
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