伊藤羊一が学部長に就任 武蔵野大学「アントレプレナーシップ学部」は学生をどのように育てるのか日本初の「起業家精神」学ぶ学部【後編】(4/4 ページ)

» 2020年12月26日 13時47分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
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社会課題を解決できる人材を育てる

――ゴールは起業ではななく、自分の人生を歩いて、結果として「ことを成す」人材を育てるということでしょうか。

伊藤: 自分の人生を歩いて、社会の一員であることを意識できれば、未来はどうにでもなるというポジティブな思考ができると思っています。

 例えば、の話ですが、新型コロナウイルスの感染が世界中に広がったことで、1、2カ月みんなが活動をやめたら、空気がきれいになりました。インドのデリーやヒマラヤ、パリの凱旋門の周辺なども、クリアに見えるようになったといわれています。

 今まで私たちは、社会が発展していく過程で生まれたネガティブな要素やゆがみを、テクノロジーの力で解決すればいい、と考えていました。排ガスを抑えるのもテクノロジーの力で解決すると言っていましたが、実際には解決できていませんでした。それが、2カ月活動をやめただけで空気がきれいになったことで、分かってしまった。私たちは、テクノロジーの進化により便利にはなったが、幸せになるためには、やらなければならないことは山積みだ! と憤りに近い感情をあらためて感じました。

篠田: この腹立たしさに共感できる力を持った学生が、出てくるといいですよね。

伊藤: 経済を回していくと同時に、社会課題を解決してみなが幸せに生きる社会をつくることが大事だと思います。世界のトップリーダーはESGやSDGsの大切さに気づいています。貧困やジェンダーギャップ、交通事故や地域格差など多様な問題があります。こういう問題に気づいて、問いをたてて、解決していく。こういう学生が増えたらいいですね。

 今はあらためて、大学4年間かけて人と向き合うことの大変さを感じています。インターネットは早くて翌日結果が出る。農業は時間がかかり、1年単位で結果が出るんだな、大変だなと思っていましたが、大学での教育は期間も長く、農業よりも大変ですよね(笑)。既存の大学との違いも意識しながら、アントレプレナーシップ学部を長期プロジェクトでつくっていきたいです。

phot 記者発表にて
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