なぜ面接評価はアテにならない? 離職率をはじき出すAIがすごい(2/2 ページ)

» 2021年02月05日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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パフォーマンスに最も影響したのは、考え方や価値観だった

 一般的な適性診断は、心理学などの研究を元に人が持っている要素を分類し、その要素の強さを測る方法で診断を行う。一方でアッテルは、数多くの企業に協力してもらい10万人から、1000個近い質問の回答を得た。その上で、その従業員の評価と掛け合わせ、どんな質問がハイパフォーマー/ローパフォーマーの違いにつながっているかを分析。独自の適正診断を作り上げた。まさに、ハイパフォーマーだけが持つ特性を見極めるテスト項目だ。

 結果分かったのは、「最も予測精度が高かったのが、考え方や価値観に関する問いだった」(塚本氏)ということだ。

 人物評価には一般に、企業のカルチャーマッチの軸と、スキルや経験の軸がある。しかしスキルや経験については見極めることが難しく、唯一分かっているのは学力が一定以下だとローパフォーマーになりやすいということ。そして、一定以上だと仕事の評価には関係がなくなる。

 一方で、カルチャーマッチの部分については、入社後の成果について高い予測精度が出た。ただし、会社全体へのマッチと、職種マッチの両方の要素があり、どちらが強いかは会社によっても異なるという。「例えば、職種によってハイパフォーマーの特徴が異なる会社もある。逆に、企業カルチャーの強い会社などでは、職種によって変わらず共通の場合もある」(塚本氏)

ハイ/ローパフォーマーと同じ手法で、退職者/在籍者も分析することで、どのような人が、どんな環境にあると、どのくらいの確率で退職するかもデータから導いている(アッテル)

 塚本氏が目指すのは、企業や職種ごとにどんな要素を持っているとハイパフォーマーになりやすいかというモデルの作成だ。カルチャーマッチがハイパフォーマーに結びつくということは、企業ごとにハイパフォーマーになれる人材の性質が違うということでもある。世の中全体のモデルを作れれば、今の会社で活躍できていなくても、ハイパフォーマーになれる会社をアルゴリズムで見つけ出せるようになる。

 「A社で活躍できない人は、B社に行けば活躍できる。データを集めることで、日本全体、世界全体での人材の最適配置を目指す。転職サービスの裏側のアルゴリズムを担えるようになりたい」(塚本氏)

人事にもデータの時代が来る

 アッテルは19年のサービス提供後、約300社に導入されている。社員数百人の企業では採用に使うことが多く、1000人を超えると採用よりも配置時の参考として使われることが多い。

 製造現場はもちろん、営業やマーケティングでも、人の感覚ではなくデータに基づいて判断するのは今や当たり前だ。ところが、人事面ではデータの活用が遅れている。「採用時評価と実績評価が一致しているかの振り返りは、9割の会社がやっていない」と塚本氏は言う。ほとんどの会社では、好みや直感で採用を決めており、データは活用されていないのが現状だ。

 「データが好きな会社は、アッテルの評価を6割くらい参考にして人事を判断してくれている。新興でIT系のほうがデータを生かして意思決定してくれるところが多い」と塚本氏。

 営業で、データを活用する営業支援システムが根付いたのがこの20年。バックオフィスでも、徐々にIT化とデータ活用の動きが進んでいる。アッテルが掲げる「脱。感覚人事」の時代が少しずつ近づいてきている。

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