定年延長に向けた人事制度改革(1) 〜賃金改定の実務からジョブ型雇用、同一労働同一賃金、退職金制度の対応まで〜定年延長のリアル(1/4 ページ)

» 2021年02月25日 07時00分 公開

連載:定年延長のリアル

本連載では、高年齢者活用というテーマの中でも企業の関心が最も高いであろう、「65歳への定年延長(あるいは70歳までの雇用)」を取り上げ、各企業の実態に即した定年延長の進め方や、実際に定年延長を行った企業の実例をもとにした成功ポイントを解説します(著者:森中謙介)。

 連載の第2回目では、「定年延長をするためには、何から取り組めばいいのか?」という問いに対して、「現状分析」からスタートすべきであることを提案し、その具体的な方法について解説しました。

 第3回目以降は、現状分析の結果、高年齢者活用を促進する手段として定年延長の実施を本格的に検討したいと考える企業に向けて、特に定年延長時における人事制度改定の手順を中心に、具体的な事例を交えながら解説していきます。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

何を、どこまでやればいいのか?

 実際に定年延長を行うにあたり、企業としてはどういったことを決めなければいけないでしょうか。もちろん、単純に定年年齢を延長するだけで、その他の労働条件は定年延長前と何も変えない、というような例もなくはないでしょうが、一般には各種人事制度(賃金制度をはじめとする労働条件)の改定を中心に、企業全体としての検討事項は少なくありません。

 例えば、定年延長を契機に高年齢者層への期待役割を見直したり、あるいは仕事内容そのものを変えたりする場合、同時に組織体制の整備が求められるかもしれません。

 具体的には業務実施体制を大幅に見直したり、関連して、職場内の作業環境を改善したり、高年齢者層に対して必要な教育訓練を行ったり──。さらには健康管理面での支援を会社が充実させる必要なども出てくるかもしれません。

 このあたりの周辺的な取り組みのボリュームは当然ながら、各社の高年齢者活用の必要性と環境整備が必要な時間軸(短期または中長期)によって変わってきますが、一般に検討が必要な事項についてはあらかじめ網羅しておき、具体的な検討時に抜け漏れがないようにしておきましょう(図表1)。

(図表1)定年延長時の具体的な検討ステップと検討内容(一例)

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定年前後で適用される人事制度を接続する? 接続しない?

 定年延長における人事制度改定の具体的な検討に際しては、(図表1)で示したように「基本コンセプトの検討」からスタートすることが肝要です。具体的には定年延長に伴い、定年前後で社員に適用される人事制度を変えるか否か、という観点が非常に重要になります。

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