――『やくも』は、東京ディズニーランドの生みの親が「原作者」だったんですね。
そうなんです。「多治見ものがたり」の執筆中、こんなことがありました。僕が有楽町にいた堀先生に会いに行っていると、堀先生が、大学を卒業した年齢くらいのお孫さんを連れてきたんですね。それで突然「小池君、孫を頼む」って言われたんです。このお孫さんに東京ディズニーランドのDNAや全ての資料を継がせようと考えたらしいんですね。ここから彼とも仲良くなっていくわけです。
そして「多治見ものがたり」が完成していなかったある時に、お孫さんから電話がかかってきましてね。「小池さん、おじいちゃんの物語で多治見を活性化するなら、これから僕は、漫画を提案する」って言うんです。「孫を頼む」の真意はここにあったのかと確信しました。それで、まだ「多治見ものがたり」が世に出ないうちから、漫画を用いたまちおこしの企画を始めたのです。それで2012年から発行しているフリーコミック版『やくも』につながっていくわけです。
――堀貞一郎さんから学んだ仕事観を教えてください。
「人がやっている仕事に多くの時間を割くことは人生の無駄遣い」という言葉はすごく印象に残っていて、私の働き方にも生きています。他にも、「時の中に時をつくる」とも教わりました。
これは、特に日本人は平和で平均寿命が長いのもあり、普段自分は死なないと思って生きているんですよ。つまり、時の外に永遠があると思っている。でも、堀先生は自分の寿命という時の中に時を作っていました。「同じ時間の中に永遠がある」「永遠は時間の中にあるよ」とも仰ってました。
――Appleの創業者スティーブ・ジョブズも、05年の米スタンフォード大学の卒業式で似たことを話していますね。
とても似た考えを持っていると私も思います。自分の仕事のために時間を惜しまずかけようとするから、生産性がとにかく高いんです。すごく時間を大事にする。例えばバーに一緒にいっても、店員が「少々お待ちください」と言うと「あなたは私の命を取るつもりか」って叱るんですよ。
でも、だからこそ85年という人生の中で多くのことを成し遂げたのだなと思います。人生の中で時間を区切って目標を立てる生き方は、私も取り入れています。
私はスティーブ・ジョブズも尊敬しているのですが、彼は56歳で亡くなったんですね。以後、私もジョブズ同様、56歳になって以降「いつ死んでもいい」と思って社長をやってきました。ただ、幸い私は死にませんでしたので、会長へと身を引いたわけです。これからは、多治見というふるさとのために何ができるかということに力を入れていきたいですね。
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