スマホ捨て自給自足、ファーウェイの「抗日戦争」を読み解くキーワード<ファーウェイの現在地・下>浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/7 ページ)

» 2021年04月08日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

一次産業、二次産業のICT化にフォーカス

 スマートフォン生産を封じられたことで、ファーウェイは「5Gネットワークを活用したICTソリューションを提供する企業」という原点に立ち返った。5G時代に入ると、スマートフォンや家電など端末はもちろんのこと、空港、港湾、鉱山、工場などもICT化の対象になる。

 今年2月には、中国有数の炭鉱地域である山西省で、5Gやクラウドコンピューティングなどの先進技術によって、鉱山経営の効率と安全性を向上させるプロジェクトを発足した。

 「中国には5300の炭鉱、2300の金属鉱がある。これらの鉱山の経営を効率化・無人化できれば、気象条件が劣悪で、人々が生活できない場所にある鉱山の採掘が可能になる」(任総裁)

 中国で豚の価格が高騰していることを背景に、ファーウェイが養豚業に乗り出すとの噂も広がり、胡輪番会長が3月31日の決算会見で、わざわざ「養豚はやらない」と否定するほど注目が集まっている。ただし同社はAIや5Gを使って養豚場の無人化、経営効率化を進める「スマート養豚ソリューション」を既に発表している。

 鉱山や養豚場のICT化は欧米企業が入ってきにくい分野で、かつ新興国での需要が期待できる。国有企業、欧米大手との競争を避け、農村やアフリカからシェアを広げたファーウェイの歴史を考えれば、「らしい」選択でもある。

グローバルで20万人近い社員を擁するファーウェイ。中国市場を拠点に新事業を模索している(筆者撮影)

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