マーケティング・シンカ論

黒船来航! 「ゴロゴロしながら英語が学べる」アプリが、わずか7カ月で新規DL数を2.5倍に伸ばしたワケ独特な日本市場(2/4 ページ)

» 2021年05月10日 07時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

「お風呂で使っている」から気付いた強み

 「日本で外国語を話せるようになりたいと考えている人は人口の約70%の、約8800万人。しかし、実際に学習している人は、学校教育を除くと13%の約1700万人だけ。つまり、約7100万人が『話せるようになればいいな』『だけど勉強然とした学習はやだな』という思いを抱えています。私自身も、参考書を開いて、付属のCDをセットして、というような勉強は面倒だなと思いますしね」と、水谷氏は話す。

 約1700万人の学習者のニーズは、「TOEICの点数を伸ばしたい」「試験で良い点数を取りたい」というようなもの。この層を狙ったアプリやサービスは多数ある。その一方で、残りの約7100万人に訴求するサービスは多くない。水谷氏は「Duolingoでは、英語を話せるようになりたいと感じる人のうち、まだ勉強に至っていない人、英語に対して苦手意識があるから、できれば克服したいというライトなニーズを持つ人をターゲットに据えました」と説明する。

 このことに気が付いたのは、「お風呂でDuolingoを使っている」というユーザーの声がきっかけだったという。

 あるデプスインタビューで、2年ほどDuolingoを使っているユーザーが「毎日、お風呂に入っているときにDuolingoをやっています」と話したという。水谷氏は、「最初は、若い人はスマホをお風呂に持ち込むんだな。水没させたら危ないな、といったくらいしか頭に浮かびませんでした」と当時を振り返る。

 しかし、「なぜリラックスタイムに勉強するのだろうか」という疑問が次第に強くなった。後日、そのユーザーに深掘り質問をしたところ、「お風呂でインスタグラムを見るのと同じ感覚ですよ」という答えが返ってきたという。

 「そういえば、ベッドの中でDuolingoを使っているというユーザーも多い。お風呂のエピソードを聞くまでは、『スマホだからどこでもできるよな』という感想しか持っていなかったのですが、そうではなくリラックスしているシチュエーションでDuolingoを使ってくれている、ということに気付いたんです」

 Duolingoの強みは、「リラックスタイムにボーッとしながらでも学べる」というものだと水谷氏は気が付いた。

 そこで、年末年始、一年の計を立てつつも、ついゴロゴロしてしまう時期に「ゴロゴロしながらでも英語を学べる」というキャンペーンを打ち出した、というわけだ。

年末年始キャンペーンの成功と失敗

 「Duolingoという名前だけでなく、それが英語学習できるアプリである、というひもづけ、つまりカテゴリーベネフィットが欲しかった。“ゴロゴロ”“Duolingo”“英語学習”――それらを全部入れこんでできたのが、『デュオリンゴロゴロ、デュオリンゴロゴロ、ゴロゴロしながら英語が学べる』というフレーズなんです」と、水谷氏は話す。

 このキャッチフレーズを使った動画を作り、YouTube広告を中心に出稿した。またTwitterでは「ゴロゴロ応援キャンペーン」と銘打ってユーザー投稿を促した。結果として、その他の施策も合わせ、前年同月比で60%のユーザー増加率を達成し、成果を得ることができた。

「ゴロゴロ応援キャンペーン」プレスリリースより

 しかし、同キャンペーン内で反省点もあったという。それは、「ストーリーを複雑にしすぎたこと」だ。

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