マーケティング・シンカ論

黒船来航! 「ゴロゴロしながら英語が学べる」アプリが、わずか7カ月で新規DL数を2.5倍に伸ばしたワケ独特な日本市場(3/4 ページ)

» 2021年05月10日 07時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

 マーケティングにはストーリー作りが欠かせないが、あくまで「受け手にとってのストーリー」として分かりやすく伝える必要がある、と水谷氏は話す。

 「複雑すぎた」施策として、年末年始の渋谷に掲出した屋外広告がある。

 「『日本人の約7割が英語が苦手。なぜだろうか。英語が苦手になった理由をTwitterで教えてください』というコンテンツで、会話を巻き起こそうとしました。“日本人の7割が英語に苦手意識を持っている”→“英語が苦手だと感じるようになった理由をTwitterで教えてください”→“肩肘張らなくても、ゴロゴロしながら学べるDuolingo”“そんなDuolingoが、ゴロゴロ応援グッズをプレゼント”というストーリー仕立てにしました」

 「このストーリーは、全く伝わりませんでした。ユーザーにとっては“その瞬間に理解できるストーリー”が全て。発信側のエゴで『ストーリー仕立てになっています』というのは良くない、という反省につながりました」

渋谷駅のイメージ。「ゴロゴロ応援キャンペーン」プレスリリースより

 かなりの予算を投じた屋外広告より、ストレートな訴求が功を奏したということについて、本国の評価はどうだったのかが気になるところだが、「当社は、行動から何を学んだか、発見したかに重きを置く会社なんです。良くも悪くもテクノロジーカンパニーなので、失敗から学べればそれで良し、と見なされました」と水谷氏は言う。「今回は、成功もしたし、学びも得られたので、かなり良かったと感じています」

「ターゲット層の気持ち」に寄り添った施策

 韓国コースのキャンペーンでも、大きな発見が得られたという。

 「韓国語コースはリリースから1年目ということもあり、あまり予算をかけられなかったので、徹底的にリサーチしてターゲットを絞り込みました。すると、韓国語はK-POP好きな若い世代と親和性が高いことが見えてきました。さらにコロナ禍のため、韓国に旅行に行きたくても行けない状況であることが分かりました」と水谷氏は話す。そこで行ったのが、「Duolingo 未来で行く卒業旅行券 プレゼントキャンペーン」だ。

 Twitterアカウントをフォローして、「#未来で行く卒業旅行券」を付けて引用リツイートした方に、抽選で10万円分の旅行券をプレゼントするというものだ。結果として、韓国語学習でのユーザーは70%増。広告費はあまりかけずに、最大限の効果を得ることができたという。

 「これは、日本だけでなく全社的にも大きな発見だった」と水谷氏。「広告費をほとんどかけなくても、ターゲットユーザーの気持ちに寄り添うものを作れれば、新規流入につながると分かりました」と解説する。

 また、「Duolingoには年齢層の高めなユーザーが多いが、正しいアプローチをすれば若年層にも受け入れられるのだ」という気付きにもつながった。

日本市場は独特?

 このような短期的なキャンペーンの他に、定常的な施策も行っている。ASO(アプリストア最適化)、YouTubeのタイアップ、デジタルアド、Twitter運用などだ。特にYouTubeに関しては、「語学学習コンテンツを出しているYouTuberとの相性が良いのは当然だが、それでは規模が広がらない。いわゆる“語学系”でなくても、英語の必要性を感じていて勉強中、ということをファンが知っているようなYouTuberだと相性が良いと考え、その中でも熱量の高いファンが多い人にタイアップをお願いしています」と解説する。

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