本来、施策を展開するときには、必ず達成すべきゴールがあるはずです。
「この施策を行ったら、社員のモチベーションが上がり離職率が下がる」
「この施策を行ったら、現場部門が生き生きとして業績が向上する」
こうした「最終ゴール」を達成することが施策展開における真の目的なはずです。ゴール達成までに起こる反発や障害は取り除いていく必要があり、そのためには「現場部門の抵抗や反発」を、次のようなポイントから常にしっかり議論していく必要があるといえるでしょう。
「現場部門は、この施策に対して、白けていないか」
「誰が、この施策に対して、抵抗や反発をしそうなのか」
「どんなポイントが、抵抗や反発につながるのか」
「その抵抗や反発に対して、どう向き合っていくか」
ただ、こうした議論は、現場部門の状況把握ができていることが前提です、正しい判断を行うためにも、人事部門は現場部門の情報を日頃から多く積み上げておく必要があるのです。
コロナ禍がもたらした最も大きな影響は「人の接触制限」です。
これにより、社員間のコミュニケーションが減ってしまったことは、皆さんも強く感じているのではないかと思います。しかし、コミュニケーションが減って困っているのは、むしろ日々の業務を回していかなければならない現場部門の社員です。現場部門が困っている今だからこそ、話を聞いて情報を得るには大きなチャンスです。
多くの人間は「自分にとって得になるかどうか」でいいか悪いかを判断する傾向があります。「最近困っていることはない?」と人事部門が声をかけてあげることで、コミュニケーションが少なくなり、情報が不足している現場部門の助けにつながることもあるはずです。困っている今だからこそ、現場部門は「人事と話をしてよかった」と感じられる機会は多くあるのではないでしょうか。
コロナ禍で進んだオンラインコミュニケーションは、「一対多」のコミュニケーションより「一対一」のコミュニケーションの方が向いていると筆者は考えています。多数が参加するオンラインミーティングでは発言しにくく、いいたいことを伝えられずにフラストレーションを抱えている社員も多くいるのではないでしょうか。また、メールやチャットは、リアルに会わずとも一対一のコミュニケーションを可能にしてくれます。
現場の社員も今、コミュニケーションに飢えているはずです。周囲が気付かないうちに苦しんでいる社員がいるかもしれません。今は、人事が現場部門と会話をするハードルが下がっている絶好のチャンスです。まずは雑談からでも現場社員との会話を積極的に行ってみるべきではないでしょうか。
コロナ禍により社会も働く環境も大きく変わってきます。来たるべきポストコロナの時代は、これまでとは違った組織戦略も必要になるはずです。そのときのためにも、今現場部門の情報をしっかりと把握しておくことが重要になるのではないかと思います。
組織・人事クリエイティブディレクター/マイクロ人事部長
株式会社モザイクワーク 取締役
株式会社ティーブリッジェズカンパニー 代表取締役
法政大学 兼任講師ほか、複数企業の人事責任者として従事。
慶應義塾大学卒業後、株式会社ジェーシービーでインターネット黎明期の新規事業立ち上げに従事、その後NTT、トヨタのクレジットカード事業立ち上げに参画。その後人事に転身し、トヨタファイナンス株式会社、創業100年企業、株式会社HDE(現HENNGE株式会社)で人事部長を歴任したのち、「人事の複業」として複数企業の人事責任者としてハンズオンで企業の組織改革を手掛けている。
新卒、中途、アルバイト採用変革、外国人採用、人事制度改革、女性人材活用、組織改革プランの企画・実行、HR Tech導入、労務実務改革、組織健康戦略、戦略総務(BCP/リスクマネジメント/オフィスファシリティマネジメント)など、企業の中に入ってハンズオンで行っている。セミナー登壇・メディア出演多数。
「高橋実@マイクロ人事部長」としてnoteでも情報発信を行っている
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