崎陽軒の命運をかけた2つの変革は結実する。創業100周年となる2008年に、100億円を超える借金はゼロになった。
従前より野並社長は100周年までに全て返済すると公言していたが、見事に有言実行となった。もちろん、これらの改革に並行して、赤字店舗の閉鎖や、レストランをはじめとする新規事業の開拓など、当たり前の経営努力をしてきた結果であることは間違いない。
勢いづいた崎陽軒は、そこから一気に右肩上がりの成長を遂げていく。コロナ前までの数年間は過去最高売り上げを更新し続け、20年2月期は約261億円に達した。
社長に就任してから抱え込んだ借金を完済しただけでなく、十分すぎるほどのお釣りがくる収益をもたらしたのだった。
「あのとき変化できたから、今日があると思います。あれだけの軋轢を生んだのです。やらなくて済むなら、やりませんよ。けれども、業績はどんどん落ちていたし、逆に借金はふくらんでいった。何とかしないと会社がつぶれるという危機感があったから、大変だけど、とにかくやっていこうという一心でした」と、野並社長は述懐する。
もしもあのとき、痛みを伴う改革を断行しなければ、多くのファンに愛されている崎陽軒のシウマイは姿を消していたかもしれない。厳しい局面においても、やり遂げる勇気と決断力こそが経営者の責務であることを、野並社長の行動からあらためて知ることとなった。
後編では、崎陽軒が守り続ける「信頼性」はどのように作られてきたのかについて、商いの本質とともに迫る。
伏見学(ふしみ まなぶ)
フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。
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