クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

自動車メーカー8社のカーボンニュートラル戦略池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/8 ページ)

» 2022年01月01日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

内燃機関を止めるわけではない? ホンダ

 ホンダは4月に行われた三部敏宏社長の就任会見で、40年までに内燃機関を廃止すると宣言した。これについてはいろいろ疑義がある。会見第1部のプレゼンでは、かなり明確に、地域別の「BEV、FCEV販売比率100%」までのロードマップを説明し、普通に聞いている限り「もう内燃機関はやりません」という宣言に聞こえた。

ホンダは電動化100%へ向けたロードマップも公開している

 まさに衝撃的発表だったわけだが、第2部の質疑応答で、ロードマップの詳細への質問が飛ぶと、どうも様子が違ってきた。全車BEVにするにはバッテリー価格の低減が必須だが、目処は立っているのか? 原材料の確保はどうするのか? 100%を達成する時点の車種数はどのくらいなのか? など、具体的プランについての質問が相次いだが、三部社長の答えは「あらゆる課題がたくさんあるが、全てをひとつずつ進めて行くしかない」とか、「車種数については明確に決まったものはない」という具合で、方法論の説明には至らなかった。

 特に「19年後には純内燃機関もハイブリッドもいらなくなるとの説明だが、今後開発はどうなっていくのか?」という質問に対しては「ホンダとしては、特定技術に決め打ちしたシナリオを描かない。技術はいかようにも進化していくものなので。さまざまな技術に対して可能性を残して行くべきだ」。と答え、実質的にはマルチソリューションであるという印象を受けた。

 「内燃機関廃止」というよりは、「2050年までのカーボンニュートラルに真剣に取り組む姿勢を見せる」という意味であり、具体的に戦術や戦略が整っているわけではないという回答に思えたわけだ。常識的に考えれば、世界の動向を見ながら、臨機応変に舵(かじ)取りをしていくという話だろうし、それは取りも直さずマルチソリューションを意味するものと思われる。

 足下を見れば、ホンダのビジネスの主力は圧倒的に内燃機関とHEVであり、BEVはまだ1車種を投入しただけで、他社と比べて特別に違う施策は見えてこない。第2部の質疑応答を聞く限りではマルチソリューション戦略と理解するべきだろうが、第1部の公式なプレゼン発表を字面通りに受け取れば、BEV一本化となる。厳密にいえばFCEVもそこに含まれるのだが、常識的に考えて目標とされる40年までには、FCEVの台数は大勢に影響を与えるまでにはならないと思う。果たしてどちらがホンダの真意なのだろうか?

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