クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

自動車メーカー8社のカーボンニュートラル戦略池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/8 ページ)

» 2022年01月01日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 さて、次に各国マーケットにどのようにアプローチしていくつもりなのかのコメントを抜き出してみよう。

 26年度までにEVとe-POWER(シリーズハイブリッド)搭載車を合わせて20車種導入し、各主要市場における電動車の販売比率を以下のレベルまで向上させていきます。

  • 欧州: 75%以上
  • 日本: 55%以上
  • 中国: 40%以上
  • 米国: 2030年度までに40%以上(EVのみ)

 欧州は販売台数そのものが多くないので、全体に与える影響は少ない。数が多いのは当然中国と米国だ。ここがそろって40%となっているのをどう見るかがポイントだろう。5年後の40%は常識的には相当高い目標で、かなり難しいのではないかと思われるが、現在の投資市場の温度感からいえば、これでもおそらく物足りない。しかしながらそうはいわれてもこれ以上の無茶な数字は積み上げようがないというのが日産の本音だと思う。

 個別に見れば、中国はおそらくHEVをそれなりに見込んでいるのではないかと思う。BEV20%とHEV20%のトータルなら少し現実的に見える。

 一方、米国でBEVのみ40%はちょっと理解に苦しむ。現在のBEVの能力では、州をまたぐ移動はほぼ不可能なので、現実的に見た米国でのBEVの使われ方は、都市内のコミューターということになる。

 だとすれば、中心になるのはCセグメント。つまり、リーフとその派生モデルということになるのだが、本当にリーフだけで40%を取ろうというのだろうか? それと北米マーケットで重要なインフィニティをどうするのか? まあテスラの成功と同じく、長距離移動をしない富裕層のラグジュアリーなアクセサリーとして売れるのならいいのだが、そこにまだ二匹目の泥鰌がいるのかどうかは分からない。「やってみたけどダメだったわ」はトヨタなら普通の話だが、今の日産の体力では、しばらく連勝でいくしかない。状況が違いすぎる。

 最後に日本だが、これはHEVを含む55%なので、むしろ一番イージーな目標かもしれない。

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