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タレントの肖像権ビジネスに商機 中卒だった元自衛隊員が、起業するまでの軌跡中小企業の救世主となるか(1/4 ページ)

» 2022年03月05日 11時55分 公開
[武田信晃ITmedia]

 感染が広がってから3年目に突入した新型コロナウイルス。感染力の強いオミクロン株は2022年に入り一気に感染爆発し、再び日本経済を振り回している。その悪影響を一番先に受ける中小企業を助けようというのが「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」だ。

 プロモーション、Webマーケティング事業を手掛ける中小企業のチカラ(東京都渋谷区)が手掛ける同プロジェクトは、参加企業に対してアンバサダーに就任したタレントの肖像をプロモーションに使用できる肖像権使用形態のビジネスを立ち上げた。

左から第3期のアンバサダーの滝川クリステル、永作ひろみ、郷ひろみ、市原隼人(以下、撮影:苅部太郎)

 第3期のアンバサダーには郷ひろみ、永作博美、市原隼人、滝川クリステルと豪華な面々が名を連ねている。4人を迎え、2022年をコロナ禍の新たなスタートをとなる“中小企業元年”と位置付けた。このプロジェクトを推進し、中小企業の情報発信力・PRの強化、働く社員のモチベーション向上の機会創出、SDGs推進活動など全方位的なサポートを通して、コロナ禍で苦しむ中小企業をサポートする。

 同社の山下佳介社長に今後の勝算を聞いた。

山下佳介(ヤマシタ ケイスケ)1986年生まれ。茨城県出身。中学卒業後、陸上自衛隊に入隊。パルスレーダー整備士として5年間勤務。20歳の時に退職し受験勉強を経て大学入学。卒業後エン・ジャパン入社。中小ベンチャー企業に特化した新卒採用コンサルティングに従事。2014年リアステージ立ち上げに参画。新卒紹介サービス「ジョブコミット」を立ち上げ7年で年間入社決定2000人超えの事業に成長させる。新型コロナウイルスの感染拡大により大きな打撃を受けている中小企業を支援するために21年1月「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」を立ち上げる。同年6月にプロジェクトを分社化し中小企業のチカラの社長に就任(撮影:苅部太郎)

コロナでも昨対比150%成長だった

――芸能人を利用した肖像ビジネスを始めたきっかけは?

 私は今、中小企業のチカラの社長を務めていますが、グループ会社であり中小・ベンチャー企業に特化した人材紹介事業を手掛けるリアステージの立ち上げメンバーでした。リアステージは創業6年目にして新卒紹介事業で全国トップ3になりました。ここで一気にアクセルを踏もうと、20年1月に大きな予算を投じてタレントを活用したプロモーションを仕掛けました。

 しかし、2カ月後の3月に新型コロナウイルスが発生して日本で本格的に流行しました。今後の見通しが立たないということで広告は止めましたが、3カ月のタレント活用プロモーションのおかげで集客数や問い合わせ数が増え、人材紹介事業は昨対150%の成長を遂げました。そのときに「タレントを活用したプロモーションの力はすごいな」と私自身が実感しました。

 また、コロナ禍でも私たち自身は何とか頑張れたのですが、もともと中小・ベンチャー企業を中心とした求人企業数が、コロナ前は1000社以上だったのに、250社まで減りました。75%の減少です。私たちはこれまで中小企業のおかげでここまでやってくることができました。であれば今回は、私たちが中小企業の皆さまのために何かできないかと考え、これまでの恩をお返ししたいと思ったのです。

――そこで「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」を企画したのですね。

 中小企業はコロナ前から採用に苦戦してきました。その背景には「中小やベンチャーって怪しいんじゃないの?」「初めの3年は大手に入った方がいい」などといったイメージや社会の風潮があります。

 一方、日ごろから中小企業に接している私たちとしては「素晴らしい事業や素晴らしい思いを持っている企業はたくさんあるのに」というもどかしさがありました。ならば芸能人やタレントの力をお借りして、多くの会社が「こんな思いで事業をやっている」と発信できたら、中小企業のビジネス環境を整備できると考えたのです。

――どんなビジネスモデルなのか、もう少し説明してください。

 企業は当社に一定の金額を年間契約で払っていただきます。するとプロジェクトに加入した企業は、当社で契約しているタレントの肖像をプロモーションの中で使えるようになります。ほかにも加入している中小企業350社のネットワークにつながり、参加企業同士のコミュニティーにも加わることができます。さらにはタレントとの合同PRイベントにも出席できるようにしました。

 2月からはテレビ東京で田村淳さんと一緒に日本の社会問題や地方自治体の課題について、私たちのプロジェクトに参加している企業の方に解決してもらおうという番組を放送しています。会員企業は、番組に無料で参加できるようにしました。

 また、中小企業を元気にしようというプロジェクトの趣旨から「日本中小企業大賞」という賞を創設して、日本の元気につながる努力や実績を残した企業や社員をたたえます。ここにはアンバサダーのみなさんも呼んでいます。

――テレビ広告を打てば、プロジェクト参加費の何十倍という広告費がかかります。その意味ではコストパフォーマンスもよく、ユニークなビジネスモデルだと感じます。このアイデアを思い付いたきっかけは?

 アイデア自体は「ポン」と浮かんだのですが、やっていく中でお金もうけばかりを考えてはだめだと感じました。もっと社会のため、企業のために何かできることはないかと探りながら、少しずつ具現化してきたイメージです。

 究極的には「人材を1人雇うよりも、このプロジェクトに加入するほうがメリットあるよね」と中小企業の経営者の方々に思ってもらえるコンテンツ作りを目指してきました。

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