――やはり配信やストリーミングでは単価自体が安いということですか?
単価はとても安いですね。経営的に考えると、世間をびっくりさせるくらいに聴かれたりダウンロードされたりしないと、ビジネスとして成立しないと思います。
配信、ストリーミングのマーケットの規模はおおよそ決まっています。つまり「分母=市場」が決まっていますから、「分子=再生数」、再生された比率で利益が配分されるわけです。わずかしか再生されない場合は、全く収益につながりません。
――コロナ禍以降、配信やストリーミングが急成長した裏側には、そういった課題もあったわけですね。
ただ、ストリーミングで曲を流すことによって、潜在的な顧客層に知ってもらえる可能性もあります。
楽曲への良い導線があり、楽曲自体を良いと感じてもらい、さらにCDを購入してもらい、ライブに来てもらうのがコロナ前までのベストストーリーでした。問題は、コロナ禍になってライブという手段を封じられたことです。日本だけでなく、世界でもトップレベルのバンド以外は厳しい状況に置かれている状況です。
現在は新譜を出すにしても、欧州では配信だけではなく、カセットでも出し始めています。メタルだけかもしれませんが。少し前だと、ダウンロードカードと、LP(Long Play)盤のセットなどでしたね。
結局、ファンの方も曲を聴くときはストリーミングなのですが、ある一定数のファンには「モノとして欲しい」というニーズがあります。例えば「ヘヴィメタルバンドのツアーTシャツが欲しい」という感じです。ジャンルごとの特性も関係しているかもしれません
――コロナでライブや物販にも相当な影響を受けましたね。
21年は全国ツアーを2周しましたので、それほど大きな影響はなかったのですが、前年の20年は甚大な影響を受けました。もう、売り上げは例年の半分以下です。
21年12月には、通算29枚目のアルバムをリリースしたのですが、ストリーミング、配信は出していません。レコード会社を通さず、流通だけをお願いしています。
――レコード会社を通す、通さないとは、具体的にどんな違いが出るのでしょうか?
レコード会社と組むということは、多くの人が動き、宣伝してもらえることを意味します。一概に良い悪いとはいえないのですが、(所属事務所の)自分たちだけではできないことなので、通販全盛とはいえ、流通に乗る・乗らないは、「CDを売る」というビジネス上、非常に大きい要素です。
ただ、最近はレコードショップも減少しているので、「一斤1万円の食パン」のような感じで希少価値をつけて、売っていく方法もあるのかもしれません。
――結果的には、やはり隅田社長が自分一人の会社で、ミニマムでコンパクトにマネジメントしていたのが良い方向に働いたということですか?
結果的には、そうだったかもしれません。ダブル・アルバム「SUNBURST〜我武者羅〜」はオリコンアルバムデイリーチャートで1位、ウィークリーで5位、ロックチャートではウィークリーでも1位になりました。しかも2枚組で初回版8800円はちょっと高いのですが、ファンの皆さんが待っていてくれたことに感謝しています。
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