さて、こうやってできたGRヤリスを、さらにスペシャルに仕立てたのがGRMNヤリスである。ただでさえ、並のヤリスより増加しているスポット溶接をさらに545箇所増やした。のみならず、構造用接着剤の塗布長さまでも12メートル増やしたのである。
さらに、細かく言えば重心位置から離れた(それはつまり運動性能に影響の大きい部位を意味する)ルーフやフードのカーボン化による軽量化や、レース用に開発した空力パーツのフィードバックによる前後グリップバランスの調整なども効いている。しかし、そういう諸々は全部目的を達成するための手段であって、本当に大事なのは、「どういうクルマに仕立てるか」というリファレンスである。
GRMNヤリスに与えられたスペシャルパーツ
GRMNヤリスは、市販車として「空前かつ孤高の高さ」でリファレンスを設定した。何を以て「もっといいクルマ」なのかを再定義したのだ。そのリファレンスこそがGRMNをGRMNたらしめている部分である。
筆者は袖ケ浦フォレストレースウェイの本コースと、ダートの空き地に用意された特設のダートラコースで、GRMNに試乗した。それぞれサーキットパッケージとラリーパッケージのオプションが搭載された仕様である。素の(というのも憚(はばか)られるが)GRMNとそれぞれのパッケージの仕様と価格をトヨタの資料から抜き出しておく。
主な追加パーツ
- BBS製GRMN専用18インチホイール
- 18インチブレーキ
- ビルシュタイン製 減衰力調整式ショックアブソーバー
- カーボン(綾織 CFRP)製リヤスポイラー
- サイドスカート
- リップスポイラー他
主な追加パーツ
- GRショックアブソーバー&ショートスタビリンクセット
- GRアンダーガードセット
- GRロールバー(サイドバー有)
- トヨタはプレミアムビジネスというものが全く分かっていない(後編)
前回はGRMNヤリスがどうスゴいのかと、叩き売り同然のバーゲンプライスであることを書いた。そして「販売のトヨタ」ともあろうものが、売る方において全く無策ではないか? ということもだ。ということで、後半ではトヨタはGRMNヤリスをどう売るべきだったのかを書いていきたい。
- GRヤリス 一番速いヤツと一番遅いヤツ
GRヤリスの試乗会は今回が3度目である。そして年の瀬の足音が近づいてきた今頃になって、ようやく公道試乗会に至ったわけである。多分GRヤリスが欲しいという大抵の人には、RZ“High performance”がお勧めということになるだろう。こういうクルマは、買ってから後悔するくらいなら全部載せが無難だ。
- ヤリスの何がどう良いのか?
ヤリスの試乗をしてきた。1.5リッターのガソリンモデルに約300キロ、ハイブリッド(HV)に約520キロ。ちなみに両車の燃費は、それぞれ19.1キロと33.2キロだ。特にHVは、よっぽど非常識な運転をしない限り、25キロを下回ることは難しい感じ。しかし、ヤリスのすごさは燃費ではなく、ドライバーが意図した通りの挙動が引き出せることにある。
- ヤリスのトレードオフから考える、コンパクトカーのパッケージ論
ヤリスは高評価だが、満点ではない。悪いところはいろいろとあるが、それはパッケージの中でのトレードオフ、つまり何を重視してスペースを配分するかの結果だ。ヒューマンインタフェースから、なぜAピラーが倒れているかまで、コンパクトカーのパッケージに付いて回るトレードオフを、ヤリスを例に考えてみよう。
- GRヤリスで「モータースポーツからクルマを開発する」ためにトヨタが取った手法
トヨタは「モータースポーツからクルマを開発する」というコンセプトを実現するために、製造方法を変えた。ラインを流しながら組み立てることを放棄したのである。従来のワンオフ・ハンドメイドの側から見れば高効率化であり、大量生産の側から見れば、従来の制約を超えた生産精度の劇的な向上である。これによって、トヨタは量産品のひとつ上にプレタポルテ的セミオーダーの商品群を設定できることになる。
- ヤリスGR-FOURとスポーツドライビングの未来(前編)
トヨタでは、このGRヤリスを「WRCを勝ち抜くためのホモロゲーションモデル」と位置づける。AWSシステム「GR-FOUR」を搭載したこのクルマは、ハードウェアとしてどんなクルマなのか。そして、乗るとどれだけ凄いのだろうか。
- トヨタの大人気ない新兵器 ヤリスクロス
ついこの間、ハリアーを1カ月で4万5000台も売り、RAV4も好調。PHVモデルに至っては受注中止になるほどのトヨタが、またもやSUVの売れ筋をぶっ放して来た。
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