マーケティング・シンカ論

VTuberを活用した新しいマーケティングビジネスとは? キャラクター・コマース市場の課題を聞いた物産展で顧客を開拓(1/3 ページ)

» 2022年12月13日 12時11分 公開
[中西享ITmedia]

 アニメーションやゲームでおなじみの、バーチャルユーチューバー(以下VTuber)を活用してインターネット上で商品を販売する、キャラクター・コマースという新しいビジネスが勃興してきている。

バーチャル物産展「うまいもの市」:狗神ゆき

 各地域でバーチャル物産展などを開催して、この分野のトップランナーとして生産者や企業の売り上げ・認知拡大やブランディングに貢献しているのがベンチャー企業のuyet(ユエット、東京・渋谷)だ。

 同社は、朝日新聞社が運営するニュースサイト「withnews」とJA全農(全国農業協同組合連合会)が運営する産地直送通販サイト「JAタウン」と共同で、VTuberによる全国の特産品販売会「JAタウンバーチャル物産展」を10月に開催するなど実績を積み重ねている。

uyet共同代表である金井洸樹氏(左)と梶田大樹氏

 百聞は一見にしかずで、キャラクター・コマースがどういうものなのか、実際のバーチャル物産展を視聴してみた。北海道物産展では「和牛サーロイン」「チキンカレー」など数種類の食品を数人のVTuberが、実際に試食して食レポをし、その様子が全てライブ配信される。「チキンカレー」のコーナーでは、VTuberが「チキンがでっかい」「めっちゃ、おいしい」などと、友達言葉でライブトークしていた。

 視聴しているファンからチャットなどを通じて多くのコメントが寄せられ、それについてVTuberが答えるなど、双方向での活発なやりとりがされる。フランクな感じで商品の実演販売が行われ、最後にVTuberが「おいしいのでぜひ買ってくださいね!」と呼び掛けた。

 トークはテレビの通販番組のように事前に準備されたセリフのようなものとは異なり、スポンサーからの指示や台本はなく、正直な感想による食レポをしている雰囲気を醸し出している。

 同社の共同代表である梶田大樹氏と金井洸樹氏にインタビューし、急成長しているキャラクター・コマース市場の現状について聞いた。

梶田大樹(かじた・だいき)大学卒業後にマーケティングツールを作る会社を創業、その後VTuberの会社の役員になり事業を伸ばした。2021年10月に金井氏とuyetを創業した。千葉県出身。26歳。
金井洸樹(かない・こうき)大学卒業後に動画クリエイターになり、2017年までフリーで企業の新規事業紹介動画の規格・営業・制作に従事。2018年からANYCOLORに入社して企業案件の企画、公式番組のプロデューサーなどを担当、2021年2月に退社し、同年10月に梶田氏と共同でuyetを創業した。東京都出身。29歳。

「エンタメ限定」のジレンマに商機

――VTuberを活用した事業をやってみようと思った理由は何ですか。

梶田: VTuberは今でこそビジネス的に多様な方面から注目を集めている状態になりましたが、まだ社会の一般的評価を受けられていないのが、この市場の課題としてあります。

 今VTuber業界はファンビジネスを主軸に展開しているものが多く、VTuberの活躍の場所がエンタメに限られてしまっているのが実情です。

 VTuber、Vライバー、アバターの可能性はエンタメだけで終わるものではなく、さまざまなポテンシャルが秘められていると確信しています。だからこそエンタメ以外の活躍の場所を作るために、まずはVTuberのポテンシャルを活用し、V市場の可能性を広げるべく、VTuberを活用したビジネスを立ち上げました。

バーチャル物産展「うまいもの市」:綿雪ミナセ
バーチャル物産展「カレーフェス」:常世モコ
バーチャル物産展「カレーフェス」:白河よふね
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