最近の報道などでは世界各国で多くの人たちがマスクをせずに過ごしている風景が紹介されている。実際、筆者がシドニーの街に滞在しているときも、マスクをしている人はほとんど見かけなかった。
しかし、クイーン・エリザベスに乗船してみると、船客の全員がマスクを着用していた。レストランに入るとき、ラウンジに入るとき、シアターに入るとき、などの行動の節目ではいったんマスクを着用していたのは、「マスクをする習慣のない海外では、社会的制約がなくなって時間が経てば、たとえルールとして求められてもマスクをする人はいないだろう」と考えていた筆者としてはとても意外だった。
マスク着用を除けば、航海中においてCOVID-19対策を起因とする行動制約はなく、その意味ではCOVID-19が発生する以前の航海とほぼ同じような感覚で過ごせたといっていい。感染抑制対策の影響という視点において、日本人にとって船旅を体験できる主要な方法の1つであったフライ&クルーズは、「日常に戻った」といっていいだろう。
1つだけ例外があった。
日本への再入国にあたって手間も時間もかかるといわれていた検疫と税関をスムーズに済ませるため、検疫手続きと税関手続きを電子申請できる「Visit Japan Web」を使用した。これを使えば、検疫も税関もVisit Japan Webアプリで表示できるQRコードをリーダーに読み取らせるだけでゲートを通過できる仕組みになっている。
事前に入力を終えて日本に着陸した機内から出ようとしたら、なぜか行列ができてなかなか進まない。やっと搭乗口にたどり着いたときにその原因が分かった。搭乗口に係員が“スクラム組んで”立ちふさがって降りてくる一人一人にVisit Japan Webアプリの入力が済んでいるか確認していたため、渋滞が起きていたのであった。
手続きをスムーズに済ませるためのサービスを用意しているのに、それが使えるようになっているか人手を使って確認するために時間を要したわけで、なんとなく、「表計算を使って集計した結果を手計算で確認させた前世紀の日本の風景」を思い出したフライ&クルーズの締めくくりであった(これは22年12月中旬の状況なので、今では改善されていると期待したい)。
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