有価証券報告書での開示義務化でますます注目集まる人的資本。多くの企業が手探りの状況ですが、成功には3つの要因が関係します。アビームコンサルティングの担当チームが解説します。
前回は人的資本経営の進捗確認に必要な指標管理について解説しました。それでは人的資本の開示において、株式市場など各ステークホルダーの信頼を得られる開示指標を設定するには、どうすれば良いのでしょうか?
一方、人的資本開示に代表される情報の開示についても、企業は指標管理を推進する必要があります。
開示を実施するにあたっては、以下の図に記載した6種類のステークホルダーを意識する必要があります。それぞれに対し、人的資本開示をすることの必要性を評価し、その意義と開示をする媒体、どうやって対話していくのかを整理します。開示を通じて、信頼を勝ち取ることを目指します。
その上で、開示をする指標を、前章で述べた人的資本経営における管理指標とは別に決定していく必要があります。
開示を行う指標には、以下の4つの種別があります。
国内および海外(海外市場で事業を行う/上場している)の法令において順守するために必要な指標を指します。現在、日本・欧州・米州において検討されている法令についても、持続的に情報収集し、その状況に合わせて人材データを収集できる状況を作る必要があります。
人的情報開示が必要なステークホルダーの関心事を押さえ、自社がその関心事に対して応えられるような指標を定義します。
従業員であればエンゲージメントサーベイから、投資家であれば投資家との対話の結果からなど、それぞれの情報から各ステークホルダーの期待を把握する必要があります。
ステークホルダーは、自社だけを見ているわけではありません。投資対象や就職先の対象として、競合他社と横並びで比較します。
そのため、製品・サービス上や労働市場における競合企業を設定するなど、ステークホルダーが他企業と比較した際に、自社が劣っていないことや優れているポイントをどう伝えるか、その指標を設定する必要があります。
前述した人的資本経営に関わるストーリーを証明する指標についても、必要に応じて開示します。これを開示することで、ステークホルダーは戦略の推進に対して信頼感を抱けます。
このような観点で指標を設定し、開示戦略としてこの指標やストーリーをステークホルダーの期待に沿った形で開示していきます。投資家には投資家説明・統合報告書・有価証券報告書などにおいて開示しますし、労働市場向けには採用サイトや就職説明会などで開示します。各ステークホルダーに応じて、企業の魅力を一層引き立たせながら伝えます。
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