マーケティング・シンカ論

ネコへの投資、子ども超え 増えるネコ消費に隠されたユーザー体験グッドパッチとUXの話をしようか(1/3 ページ)

» 2024年02月22日 10時25分 公開

連載:グッドパッチとUXの話をしようか

「あの商品はどうして人気?」「あのブームはなぜ起きた?」その裏側にはユーザーの心を掴む仕掛けがある──。この連載では、アプリやサービスのユーザー体験(UX)を考える専門家、グッドパッチのUXデザイナーが今話題のサービスやプロダクトをUXの視点で解説。マーケティングにも生きる、UXの心得をお届けします。

 本日、2月22日はネコの鳴き声「にゃん・にゃん・にゃん」にちなんだ「ネコの日」。

 ダジャレみたいですが、その歴史は意外と長いです。今から37年前の1987年、愛猫家たちが構成する「猫の日実行委員会」が、ペットフード協会とともに「ネコと一緒に暮らせる幸せに感謝し、ネコとこの喜びをかみしめる記念日を」として制定しました。

 最近では、SNSに「猫ミーム」なるものが投稿されたり、コンビニが肉球の形をしたスイーツを販売していたり、ネコフェスティバルが開催されていたり……。テレビ番組やネットニュースである程度見たことはあれど、こんなに流行っていたっけ? と不思議に思う方も多いのではないでしょうか。

ネコの日(画像:ゲッティイメージズより)

 実は「ネコノミクス」という言葉が生まれるほどネコの経済効果は高まっています。関西大学の宮本勝浩名誉教授が内閣府の統計を基に推計したところ、なんと約2兆4941億円になるのだとか。これは昨年、阪神タイガースが18年ぶりにセ・リーグ優勝した際の経済効果29回分に相当するそうです。ネコノミクスは「アレ」29回分。恐るべし経済効果ですね。

 今回は、世の中におけるネコの位置付けの変化と、愛猫家たちを虜(とりこ)にするサービス、そしてそれらのユーザー体験を分析していきます。

ネコへの投資、子ども超えも

 人がネコを飼うようになった起源は古代エジプトや古代中国とされており、倉庫や農地に生息するネズミや害虫を捕まえる役割だったといわれています。その役割は中世ヨーロッパを経て日本では昭和ごろまで続きました。その後、動物愛護意識の向上やその愛くるしい姿から「家庭内のペット」という存在に変化しました。

 ペットフード協会の調査によると、2014年にネコがイヌの飼育頭数を逆転。その後も緩やかに増加を続け、21年時点での飼育頭数は約894万6000頭に上ります。その数字が示すように、ネコの飼育者は「生活に最も喜びを与えてくれること」として、「ネコ」(28.6%)を1位に選出。2位の「家族」(26.4%)を2.2ポイント上回りました。

14年に犬の飼育頭数を逆転して以降、順調に数を伸ばし続けている(画像:ペットフード協会「令和3年 全国犬猫飼育実態調査」より)

 また総務省統計局の家計調査によると、21年時点で子ども服の支出額は大幅に減少しているのに対し、ペット用品にかける支出額は大幅に増加。ペットフードにかける支出額も増加傾向にあるそうです。ペット飼育頭数・飼育率は横ばい、あるいは微減しているため、ペット用品やペットフードの支出額増加は、ペット1匹当たりの支出額が増えている証といえるでしょう。家計調査を通して、家庭内においてペットにかける支出が、子どもにかける支出と同程度まで上昇してきていることがうかがえます。

 リードをつけて外を散歩する必要がなく、家の中でマイペースに過ごすネコは、人の生活になじみやすいのかもしれません。また、動物による精神的な癒やし効果も無視できません。ネコが機嫌のいいときに喉を鳴らす「ゴロゴロ」という音は、人間の血圧を下げる効果やリラックス(ストレス緩和)効果、免疫力をアップさせる効果があると言われています。

 「家庭内のペット」として人の生活の側(かたわら)にいる存在から「家族の一員」に──その存在感はますます大きくなっているのではないでしょうか。

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