マーケティングはビジネスを成功に導く武器です。しかし、その領域は広範で専門性が高いことに加え、テクノロジーの進化や消費者ニーズの変化を常に反映させる必要があるため、簡単に扱えるようにはなりません。にもかかわらず、基本の学び方を理解せずに迷子になるマーケターが後を絶ちません。本連載では「マーケティングの学び方を学ぶ方法」を解説します。マーケティングの学習法を身に付けて初めて、マーケターのスタートラインに立つことができます。トライバルメディアハウスの「マーケティングの学び方を学ぶ塾」開校です。
前回は、学習効果を加速させる実戦術として、実戦する前の心構え、実戦する上での作法と心得、具体的な取り組み法について解説しました。
ここまで学んできたインプット、アウトプット、実戦法は、それぞれ意識して「そのための時間」を確保する必要があります。一方、1日は24時間しかありません。時間は有限です。仕事や自己啓発に割ける時間には限りがあるため、「もっと学びたい」「もっと力を付けたい」と思っても、必ず「時間が足りない」という障壁が立ちはだかります。
そこで今回は、インプット、アウトプット、実戦のための時間を確保しなくても学習効果を爆上げできる「生活習慣術」について解説します。徹底して取り組めば、普通電車が特急電車や新幹線に変形するインパクトを生むと確信しています。ぜひ取り組んでみてください。
「書籍やセミナーで有名なフレームを学んでいるのに、イマイチ実戦で使いこなせない……」と悩む方がたくさんいます。なぜ実戦でうまく使えないのか。それは、リアリティーが低いからです。
マーケティングの目的は「お客さまに買っていただくこと」です。お客さまに買っていただくために、買っていただけていない理由を明らかにし、その課題を解決する手を打つ。さまざまな概念やフレーム、新しい施策や手法は、全てこの目的を達成するための手段でしかありません。にもかかわらず、フレームを学ぶと、「フレームを使うこと」が目的化してしまい、なんでもかんでもフレームに当てはめて考えようとしてしまう。
2000年代中頃、AISASという新しい購買プロセスモデルが世を席巻しました。そのとき、多くのマーケターは「そうか! AIDMAはもう古いんだな。これからはAISASだ!」と飛びつき、そのフレーム通りに考えてしまう。しかしここで一拍置き「自分の生活に当てはめて検証してみよう」と考えるのです。
例えば、ドラッグストアで新商品の歯磨き粉を買ったとします。これを帰り道で以下のようにメタ思考します。
と、少なくともドラッグストアにおける歯磨き粉の買い物ではAISASモデルは合致していないことが分かります。
一方、最近気になっていた高級トースターの購買体験はどうでしょうか。パンがカリカリ&ふわふわに焼ける優れもので、価格は高いけれど、話題になっている商品です。
ここから、AISASはどうやら最寄品(一週間に何度も買う商品)ではうまくハマらないが、買回品や専門品(年に数回、数年に1回、一生で数回買う商品)の場合は合致しそうといったことが「実感値」として分かってきます。この自身の買い物体験を通して得たリアリティーこそが何より重要なのです。
このプロセスを経た人と、「これからはAISASだ!」と(自身の買い物体験で検証せず)実務で使う人は、どちらがうまく実践できるでしょうか。結果は火を見るよりも明らかです。
マーケティングは、お客さまに買っていただけない理由を明らかにし、その課題を解決することですから、「人間の営みを科学し、再現性を高めること」ともいえます。あなたも毎月、数万円の買い物をしているわけですから、学んだフレームや手法が「どんなときに使え」「どんなときには合わない」のか、自身の消費生活の中で検証ができるのです。
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