ここからいよいよ自由回答でいただいた質問内容です。さまざまな悩みが届きましたが、以下の4つに大別できました。
一つずつ回答していきます。なお、柔らかく伝えようとすると真意が伝わりにくくなるため、直球で回答します。決して「感じ悪いな!」と思わないでください(顔はニコニコしながら書いています)。
Q: 実務で忙しく、なかなかインプットの時間を作れないのが悩みです。効率的に知識を吸収していくために、どんなことを意識すればよいでしょうか。
A: 一番多い質問です。しかし、私もそうですし、周りの優秀な人たちを見渡しても「効率的なインプット」をしている人にはいまだ会ったことがありません。きっと、そんなTipsやノウハウなんてないのだと思います。
1日は24時間。そして、みんな(程度の差こそあれ)忙しい。この条件は全員同じです。その限られた時間の中で、なんとかやりくりしてインプットに勤しむ。その上で、もしあるとするならば、「なんとしてでもインプットの時間をつくるぞ!」という覚悟だとも思います。
仕事も家事も家族との時間も大切です。でも、それらを効率化したり、スピードを上げたりしてやりくりするのも可能なはずです。私も家事は猛烈なスピードで、それこそ鬼気迫る勢いでやります。そして、なんとか抽出した30分や1時間をインプット時間に回します。インプットは効率化できないからこそ、インプット以外の時間を効率化することにチャレンジしてみてください。
Q: 自身にとってマーケティングの新しい領域にチャレンジすることになりました。インプットするときに何から・どのように手をつけるべきでしょうか。
A: 新しい領域へのチャレンジ、ワクワクしますね。
インプットのコツは、全体観→個別→全体観→個別を繰り返すことです。決して個別テーマの学習から入らず、全体観を把握するところから始めてください。
マーケティング学習で迷子になってしまう人は、過度なズームインが原因です。目的地までの道のりをグーグルマップで調べるとき、最大まで拡大するとどうなるでしょう。「今、自分がどこにいるのか」「目的地までの距離はどのくらいか」など、全体像が見えなくなってしまいます。それと同じです。近くに寄れば寄るほど、分からなくなってしまうのです。
だから、まずは全体観を知る。次に現在地を確認する。その上で目的地までのルートを頭に入れ、少し引いた視点で現在地を確認しながら進むのが吉です。
Q: マーケティングは範囲が広すぎるため、どのように手をつけたらいいか分かりません……。
A: 「インプットの悩み2」の質問とも関連しますが、全体観を把握することです。
「マーケティングは範囲が広い」とはいえ、宇宙の果てまで広がっているわけではありません。まずは教科書(理論書)に書かれている項目が「マーケティングの全て=全体観」だと考えてください(実務をやり始めると本当はもっと広いのですが、まずは1冊の教科書から入るのが吉です)。理論書の推奨図書は、こちらの記事にまとめてありますので参考にしてください。
また、全体観を把握するのと同じくらい大切なのが、体系立って学ぶことです。事例や具体的ノウハウは分かりやすいし、すぐに使えそうで魅力的に映るかもしれませんが、実戦ではあまり使えません。
1000ピースのジグソーパズルを想像してください。10個の事例や具体的ノウハウの学習は、1000個のピースからランダムで10個を選び出し、フレームの台紙の上に並べているようなものです。どうにもなりませんよね? 散発的に学んだ断片的な知識は、数があってもあまり意味をなさないのです。
大事なのは体系です。ジグソーパズルは、ピースを色合いや模様の特徴ごとに仕分けをしておくとスムーズに組み立てられます。同様にマーケティングも、市場の選択(事業機会の選択、事業領域の選択、標的市場の選択)、市場の分析(市場データの分析、消費者行動分析、競争分析、流通分析)、市場への対応(製品対応、価格対応、コミュニケーション対応、流通チャネル対応、競争対応)などの塊があり、それらが構造的につながっています。
体系立った全体観を把握できると、自身がどこを重点的に学ぶべきか見えてくるはずです。
Q: 学んだ知識をお客さまや同僚に話すときに、うまく伝えられている実感がありません。説得力のある説明をするためには、何が必要でしょうか。
A: 大変失礼ながら、歯に衣着せずに申し上げると、説得力のある説明ができないのは、あなた自身が十分に理解していないからだと思います。
こちらの記事で「知る→分かる→できる」の3ステップを解説しましたが、あなたはまだ「知っている段階」にいて「分かっている段階」に到達できていない可能性が高いといえます。借り物の知識を人に話そうとするから、上手に伝えられないのです。
その状況を打破するためには、インプットした知識について自身の頭で考え、アウトプットする必要があります。考えるためには、書くことが一番です。書くためには、考えなければなりません。書くことを通して、考えを巡らせると、借り物の知識と、自身の知識や経験が接続されていくはずです。それこそがあなたの身体に染み込み始めた「あなたの知識」です。
そこに到達できれば、あなたの説明は格段に分かりやすくなるはずです。アウトプットの方法はこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
Q: 学習しても、その学びを実務で生かせる機会がなく、もどかしく感じています。このような場合、池田さんならどうしますか?
A: 学習したことを即実戦できる環境があれば最高ですが、一方(うまくいかない)リスクもありますから、まずは実戦に向けたアウトプットをする機会をつくりましょう。
まず考えられるのは(社内での)自主プレです。自身が担当する仕事でなくとも、課題感と解決法について資料にまとめ、社内の関係しそうな人たちに説明して回るのです。変な奴だと思われたり、(的を射た資料になっていなければ)「なんだこれ、意味不明!」とダメ出しを食らったりする可能性もありますが、めげる必要はありません。Nothing to Loseです。貪欲にいきましょう。
いきなり社内で自主プレをするハードルが高いのであれば、同僚や部下や後輩を集めた社内勉強会を催し、講師をやってください。資料作成やプレゼンの練習になるばかりか、参加者からフィードバックが得られ、「だったら◯◯についてアクションしてみましょうよ!」と仲間まで見つかるかもしれません。
「とてもじゃないが、うちの会社はそんな雰囲気じゃない」場合は転職するしかありません。しかし、転職先でも同じような環境が待っているかもしれません。まずは、今いる環境で最大限動く。「これ以上やってみてダメなら転職する」くらいの覚悟で動く。そうすると、意外と道は拓けるものですよ。
Q: 学んだことを意識して、アウトプット(具体的な施策)に落とし込んでみたものの、筋が良い内容になっているか確信が持てません。どうすればよいでしょうか。
A: せっかくアウトプットしても、答え合わせができないと不安ですよね。
解決するためには、他者のフィードバックをもらうしか方法はありません。フィードバックをもらう相手は上司や先輩が理想ですが、場合によっては同僚、部下や後輩から有益なフィードバックを得られることがあります。
フィードバックには2種類あります。1つ目は、正解に近づくためのフィードバック。これはあなたより知識や経験が豊富な人からしか得られません。2つ目は、自身が見えていなかったり、気付けていなかったり、思い込んでいたことに対するフィードバックです。これは1つ目の正解に近づくためのフィードバックとは違い、「ここがよく分からない」「なんで◯◯は入っていて、△△は入っていないんですか?」などの質問によって得られるため、あなたより知識や経験がなくても対応可能です。そして、実はこちらの方が多くの気付きが得られるものです。
フィードバックを得る方法はこちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。
Q: フィードバックが欲しいのに、社内に的確なアドバイスをくれる人がいません。こういうときはどうすればよいのでしょうか。
A: 「アウトプットの悩み4」の質問と近いですね。
まず知っておいていただきたいのは、「社内に的確なアドバイスをしてくれる人がいる」環境なんてほとんどありません。「え? うちはたくさんいるけど?」という方、絶対転職してはいけません。その「当たり前」と思っている環境は、実は最高に希少で幸せな環境です。
「みんなにはいるけれど、自分にはいない」と考えるから「自分は不運だ」となるのです。安心してください。みんな、いません(苦笑)。
ではどうするか。自分で探すしかありません。大事なことなのでもう一度言います。あなたの半径5メートルに、あなたより知識や経験が豊富で、かつあなたに寄り添い、いつでも何度でも丁寧にフィードバックをしてくれる温かい上司や先輩などいないのです。
社内にいないのであれば、社外で探すしかありません。しかし、社外の人はあなたにフィードバックをする義理はありませんから「フィードバックしてあげたい」「してあげてもいい」と思ってもらう必要があります。そのためには、「見込みのある奴」「頑張っていて、かわいい奴」にならねばなりません。
「的確なフィードバックをくれる人がいないこと」を環境要因のせいにするのではなく、「自身の努力やアピールが足りないから」と自責で捉え、やれることをやる。厳しいですが、これしかありません。
フィードバックを得る方法はこちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。
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