本体のANAでは最近、赤字路線の再編を進めている。その1つが、Peachが拠点とする大阪・関西空港(関空)発着の国内線だ。
ANA本体は関空発着の沖縄(那覇・宮古・石垣)、札幌(新千歳)の4路線を廃止し、ビジネス需要の太い羽田線のみに集中した。近畿圏のビジネス拠点である伊丹空港と、利便性の高い神戸空港を主力とし、フルサービスを求める層を囲い込んでいる。
一方でPeachは、宮古を除く路線に就航させている。ANAが撤退した関空路線の多くを継承・増便し「関空=Peachの拠点」としての地位を確立した。低コスト構造を生かし、インバウンドや若年層・ファミリー層のレジャー需要を取り込んでいる。このようにANAグループ全体での「すみ分け」戦略が垣間見られる。
またPeachには「24時間空港」である関空を拠点とするハード面での強みもある。騒音規制により深夜の離着陸が制限される成田に対し、24時間運用が可能な関空は、LCC経営の生命線である「機材稼働率」を最大化できるからだ。他社が深夜に機体を眠らせている間も、Peachはフル稼働させて利益を出せる。
ANAグループは旅客事業において、ANAとPeachによる「デュアルブランド戦略」を軸にネットワークを構築していくことを表明している。グループ内での市場適合への試行錯誤が続く中、15年を経て確立された「Peach」ブランドを、いかにして活用していくかが今後の鍵となりそうだ。
一方、JALグループは、3つのLCCを持つ。中長距離国際線のZIPAIR Tokyo(ジップエアー・トーキョー、以下ZIPAIR)、国内線と国際線を運航するジェットスター・ジャパン(以下、ジェットスター)とスプリングジャパンだ。
ジェットスターは、Peachから遅れること4カ月後の2012年7月に就航した。現在は国内線18路線、国際線7路線を運航する。
ジェットスターは、より「実利」と「機能」に重心を置いた戦略を選んだようだ。2026年2月、豪カンタスグループが保有する全株式を日本政策投資銀行(DBJ)へ譲渡することで合意。これにより、JALとの連携を深めた「本邦資本主導」の新体制へ移行し、2027年までにブランドを一新する。
Peachとジェットスターは、国内線において就航先を始めとした、さまざまな面で長らく“競ってきた”。ブランド力では先にデビューしたPeachが強く、若者を中心に利用者を増やし、就航路線を広げてきた。
一方、ジェットスターは成田を拠点に、Peachが就航していない旭川空港や松山空港などの地方路線や、機内持込手荷物7キロから「追加7キロ」のオプション料金を設けている。帰省や介護、さらにビジネスで使う利用客も少なくないなど、目立たないものの、使いやすさと幅広い層をターゲットに、地道にシェアを拡大してきた。
ジェットスターの知名度は、オーストラリアやアジア諸国などで、Peach以上に高い。ジェットスターの広報担当によると「インバウンド利用も実は多い」という。
通常、関空のLCC国内線は第2ターミナル(T2)を使用するのが一般的だ。だがジェットスターはあえて国際線が発着する第1ターミナル(T1)を拠点としている。これは、海外のジェットスターグループからT1に到着するインバウンド客を、スムーズに国内線へ乗り継がせるためだ。今後、ジェットスターもリブランドすることでPeachに対抗し、独自の経済圏を作ることになりそうだ。
国内線燃油サーチャージの導入が本格化する2027年度、航空業界の風景は一変しているだろう。もはや「どこよりも安い」という看板だけで客席を埋めることは不可能になる。
飛行機は、単なる「移動手段」から、旅の目的そのものになる――。そのための戦略を、Peachは打ち出してきた。そのリブランディングの在り方は、日本のLCCが「成熟期」に入った証左でもあるだろう。さらに、日本には大手2社以外に、スカイマークなど中堅航空会社も多くある。
大手でも、一般的なLCCでもない、独自の立ち位置を目指すPeachの今後は、果たしてどうなるか。2027年以降のジェットスターのリブランドも含めて、日本の航空業界では生き残りをかけた競争が続く。
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