そもそも、軽自動車という日本独自の車両規格が、日本の自動車市場が伸び悩む原因の一つともいえる。
今や装備が充実した軽乗用車の中には、トータルの購入金額が300万円に届くものも出てきている。それだけの金額であれば市場を潤すのではないか、と思う人もいるだろうが、実際には普通車に比べて経済への影響は小さい。
というのも、軽自動車の購入者は、維持費の安さを重視して車種を選ぶ傾向がある。そのため、車両購入以降の出費に関してはシビアな傾向がある。
つまり、軽自動車を選ぶ時点でコストを最優先する意識が強く、購入後の負担が少ないことを見込んで選んでいる。そのため、購入後のコストにも厳しい目が向けられるのは当然だ。
乗用車販売の4割が軽自動車となっている現在、クルマは薄利多売の傾向が強まっている。これが日本の自動車産業を弱体化させている理由の一つであることは明らかだ。コロナ禍や半導体不足で納期が長引く中、普通車ユーザーは値引きより納期を優先する傾向があるが、軽自動車はもともと値引き幅が小さい。
バブル期には、トヨタがマークII三兄弟を大ヒットさせたが、当時の新車価格は200万円台前半であった。クルマが高くなり、可処分所得が増えない消費者は、維持費を節約しようと軽自動車にシフトしているが、それに合わせて軽自動車の商品力が向上したことで、市場はますます縮小してしまうのだ。
ホンダはNシリーズに注力するあまり、技術を安売りしてしまったという見方もできる。当初よりは利益率が改善されたとはいえ、軽自動車の商品力を高めたことで、自社ブランドのユーザーを軽自動車市場に集中させてしまった。
ホンダが5月下旬に発売する小型EV「Super-ONE」は、軽EV「N-ONE e:」をベースとしながら、ボディのワイド化やモーターの出力アップにより軽規格からはみ出した。バーチャルなエンジンサウンドやシフト演出で、運転の楽しさを再認識してもらおうとしている。
軽EVのN-ONE e:をベースにボディや足回り、パワートレインを強化し、かつてのシティターボのようなやんちゃなホットハッチをEVで再現したSuper-ONE。長距離走行よりも純粋に走りを楽しむEVユーザー向けの提案だ(写真:ホンダ)かつてMTのスポーツモデルを操っていたクルマ好きも年齢を重ねて、熟年ユーザーとなっている。彼らに刺さるクルマを生み出す工夫がこのところのホンダに見られるのだ。
ホンダは手の届く価格で、こうした魅力あるクルマを生み出すのが得意だったはずだ。クルマ自体の魅力を高めて利益率の高い商品を展開すれば、確実に収益性は向上するだろう。
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