インターン改革には採用担当者の異動以外に、もう1つの壁があった。学生に質の高いインターンを提供するには、現場で活躍するSE社員の協力が不可欠だが、当時は社員が本業以外の業務に従事できる制度が存在しなかった。
2人は協力を求めたい現場社員の上長に1件1件アポを取り、インターンの趣旨や狙いを説明して回った。「草の根活動でした」と伊藤氏は当時を振り返る。
説得の過程で2人は、採用側だけでなく現場にとってのメリットも提示した。学生が現場社員と接点を持つことで、入社後のキャリアを具体的にイメージしやすくなるだけでなく、知っている社員がいることで、入社後のミスマッチや早期離職の防止につながる。加えて、採用に関わる経験そのものが、社員のキャリアの幅を広げる機会にもなると説明した。
また、対話を重ねる中で、採用部門が考える「優秀な人材」と、現場が求める「優秀な人材」の定義にズレがあることも見えてきた。その認識をすり合わせていくことは、採用精度を高めるだけでなく、現場組織の戦闘力を底上げすることにもつながっていった。
ただ、現場の協力を継続的なものにするには、本業の稼働時間を割いて採用に関わる現場社員を正式に評価できる仕組みが欠かせなかった。五十嵐氏は、次世代への引き継ぎを見据え、評価制度の構築に向けてさまざまな関係者を巻き込み、粘り強く交渉した。
現場社員が採用活動を通じて何を学び、どのように成長したかを振り返る面談を実施し、その内容を所属部署の上司へ共有する仕組みを整えた。会社として、採用に関わる活動を「キャリアとして意味のある活動」と位置付けるためだ。
「新しい取り組みには反発もあります。でも成果を出せれば、周囲から認められた状態で次の採用担当者が動けるようになります。だからこそ、制度と成果をセットで残すことが、後任への最大の贈り物だと信じていました」(五十嵐氏)
こうした取り組みを経て、後に「社内ダブルワーク制度」が整備され、現場社員が本業と並行して採用活動に関わる仕組みが正式に誕生した。
「後任にインターンの内容や業務フローだけを機械的に引き継いでいたら、今の採用組織のようにはなっていなかったと思います」と伊藤氏は振り返る。同氏は、インターンを「会社や仕事のリアルを伝え、学生のキャリアと向き合う場」としてどう設計するのか、という姿勢や価値観まで含めて、次の世代へ受け渡すことを重視していた。
文字にできるタスクは、マニュアル化すれば引き継げる。しかし、学生に本気で向き合う空気感やチーム全体が主体的に動く熱量は、制度だけでは残らない。
伊藤氏は、こうした目に見えない価値の継承を「熱量の伝搬」と呼ぶ。制度や成果だけでなく、その熱量まで次世代へ引き継げるか。それこそが、改革を本当の意味で続かせる鍵だと2人は考えていた。
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