かつて大阪府内の店舗の従業員が、不適切動画をSNSに掲載したことで、大戸屋はブランドのイメージダウンを余儀なくされた。さらにテレビ番組で放送された経営陣の言動が「パワーハラスメントではないか」と炎上したこともある。社内風土の改善対策について、蔵人氏は「日常の中でフランクな会話をしながら調整を続けてきました」と話す。
「フラットな関係性というのは一朝一夕にはできません。時間をかけながら、なるべく対話を意識してきました。当時の経営陣は全員退任しました。(コロワイド傘下になってからは)社員からの反発もなく、パワーハラスメントなどということもありませんでした」と指摘。悪いイメージは払しょくされたとみている。
コロワイドがTOBを仕掛けて以降は、会社のイメージを壊すような勢力はいなくなったという。いまは社員が一丸となって前を向いているようだ。
三森新社長は「蔵人社長の下で6年間やらせてもらい、本当に別会社のようなブランドに生まれ変わりました。(不祥事が起きた)当時は、店内調理、店内仕込みというやり方が時代の変化に追い付いておらず、われわれのエゴをお客さまに押し付けてしまった。その結果、信頼を裏切ってしまったのが一番の反省点でした。今後はこの盤石な経営基盤を継承していくのが、一番大事なことだと思っています」と話す。独自色を出す前に、6年間の経営路線を継承することを重視する考えを明らかにした。
今回の社長交代は、再建が終了して、創業家の長男の三森新社長に経営が託された形だ。スローガンは発表したものの、具体的な施策は発表していない。
これまではコロワイドという親会社出身の社長であったため、従業員は赤字から脱却するために頑張ってきたかもしれない。三森新社長は今後、従来路線の継承だけではなく、新しい政策を打ち出す必要があるだろう。さもなければ、従業員は新体制のもとで前を向くことができない。三森新社長には、蔵人前社長が手掛けてきた再建方法とは違う形での、従業員が一致団結できる「成長戦略」が求められている。
オーナー企業の社長交代は、いくつも見てきた。息子に経営を譲ると「創業家出身の社長だから」という理由だけで、従業員は従う傾向がみられる。だが、就任後に明確な方針を打ち出さないと、社員からの期待感との落差が発生し、社内のベクトルがマイナスに働くこともあった。
三森新社長は、従業員が腹落ちするような「攻めの方針」を、早い時点で打ち出すべきだ。
まず国内対策では、大戸屋の基本路線を守りながら、ファミリー層など新たな顧客層をいかにして開拓するかが課題となる。例えば、ファミリー向けに新しいフォーマットの店舗を作るとか、テークアウト・中食を試してみるとか、新しい打ち出し方も必要だ。
インバウンドも多数来日している。訪日外国人層に、和の定食の良さを訴求できるかがカギだ。インバウンド向けの定食ブランドを提案してみるのももいい。おいしく感じてもらえれば、帰国してからも大戸屋のリピーターになってくれる可能性がある。その意味で、海外市場での売り上げには無限の伸びしろがあるだろう。
V字回復を成し遂げ、過去最高業績を記録した大戸屋。日本での外食ナンバーワンだけでなく、世界の和食ナンバーワンを目指してもらいたいものだ。
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