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高倍率スリムデジカメ7機種を比較する(前編)――テレとワイドの写りはどう違う?(2/3 ページ)

» 2010年09月07日 15時45分 公開
[荻窪圭,ITmedia]
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パナソニック LUMIX 「DMC-TZ10」

 DMC-TZ10は35ミリ換算25〜300ミリ相当の12倍ズームレンズを搭載した「旅カメラ」だ。撮像素子は1400万画素CCDなのだが、レンズの関係で中央部の1210万画素分だけを使っている(このシリーズはずっとそうだ)。シーン自動認識のiAモードに加えてP/A/S/Mそれぞれのマニュアル系撮影モードも充実しているのが特徴だ。顔検出系に力を入れており、個人顔認識や美肌系の機能もある。

photophoto 初代TZ1から基本コンセプトを受け継いだ伝統的なデザインのDMC-TZ10。レンズが端にあるオーソドックスなスタイル(写真=左)、スライド式電源スイッチとiAから豊富なシーン、さらにP/A/S/Mのマニュアル系撮影機能まで装備した多機能デジカメ。幅広い層にアピールしている(写真=右)

 新機能で注目は2つ。ひとつは「超解像」。超解像をオンにすると滑らかな部分はそのままでディテール描写が強化される。超解像を利用したデジタルズーム(iAズーム)を使うと、16倍相当まで伸ばせる。ディテールを細かくチェックしない限り実用レベルのデジタルズームといえよう。

 もうひとつはGPS。最初の測位に時間がかかるので、目的地に着いたら撮影する前にまず電源をいれて最初の測位をしておくこと。これが大事。そうすれば、大きく移動しない限り、5分おきにきちんと測位してくれる。ただ移動しながら撮っていると間に合わないことが多い。次モデルではもっとマメに測位してもらえるとうれしい。下記作例の元データにはGPSによる位置情報が入っているので興味ある方は対応ソフトで場所をチェックしてみると面白いだろう。

photophoto 左はプログラムオートで右はおまかせiA。いずれもレンズは広角端。おまかせiAだと風景と判断されて、ややコントラストが高くシャープな絵になる。発色もコントラストもディテールもなかなかよいのでこれを基準としよう
photophoto 左右いずれも望遠端だが、右はiAズームをかけている。等倍で見てもまあこのくらいならいけるかなという感じ
photophoto おまかせiAモード時の画面。人形の顔を認識して自動的に人物モードに。MENUの他にQ.MENUが用意され、撮影設定をさっと変えられるのが便利。右上に動画ボタンも装備されておりいつでも動画撮影が可能だ。右に最後にGPSが測位してからどれだけ時間がたっているか表示している。この場合は120分以上たってる(つまり位置はアテにならない)(写真=左)、GPSが働くと、このように撮影場所がカタカナで表示される。これはちょっと楽しい(写真=右)

ソニー サイバーショット「DSC-HX5V」

 パナソニックTZシリーズの強力なライバルとして登場したのが、このソニー「DSC-HX5V」で、2010年春の人気モデルだ。35ミリ換算24ミリ相当からの10倍ズームなので望遠側が少し弱いが、広角側が強い方が旅カメラとしてはうれしいところ。

photophoto シンプルでオーソドックスなボディ。10倍ズーム機としてはコンパクトで扱いやすい(写真=左)、DSC-HX5Vの特徴は撮影モードダイヤル。人物ブレ軽減、手持ち夜景、HDR、スイングパノラマと個性的な機能が独立したポジションを持っている。これはよい。使いたいときすぐ使えるからね(写真=右)

 1000万画素の裏面照射型CMOSセンサー「ExmorR」を搭載し、その「高感度」と「高速連写」という特性を利用した高機能っぷりがウリ。特にスイングパノラマと手持ち夜景機能の便利さと楽しさは秀逸だ。

photo 背面はシンプル。マクロモードはなく(自動的にマクロ域までAFがきく)、十字キーの左にスマイルシャッターが組み込まれているのが面白いところ。三脚穴が端についているのは残念

 2番目のポイントはGPS。GPSのネックである「最初の測位」を短縮するため「GPSアシストデータ」が用意されている。ネットからこのデータをダウンロードし、それをベースに測位を行うことで、測位時間を大幅に短縮した。GPSアシストデータの有効期限は1カ月だが、時間がたつにつれ効力は薄れていく(測位に時間がかかるようになる)ので1週間おきくらいにアップデートしたい。電源オン時は約10秒おきに測位するため位置情報を細かく記録できる。3番目はHD動画。フルハイビジョン(1920×1080ピクセル)記録はAVCHD形式のみだが、このサイズ・この価格でフルHDを気軽に楽しめるのは素晴らしい。

photophoto 広角端(写真=左)と望遠端(写真=右)。ディテールのシャープさではTZ10に劣るが空の色はなかなか印象的。望遠端は240ミリ相当と今回取り上げた中では一番弱い。が、これだけ寄れれば十分だろう

カシオ計算機 EXILIM「EX-H15」

 カシオはコンパクト系10倍ズームモデルとして、CCD搭載の「EX-H15」と裏面照射型CMOSセンサー搭載の「EX-FH100」の2モデルを用意している。FH100は春の「裏面照射型CMOSセンサー特集」(この春は「裏面照射」が面白い! 搭載5製品を一気に試す:前編)(この春は「裏面照射」が面白い! 搭載5製品を一気に試す:後編)で取り上げたので、今回はEX-H15の方をピックアップした。

photophoto 丸っこいややずんぐりしたボディが特徴のEX-H15(写真=左)、液晶モニタの上にある2つのボタンがポイント。AUTOは押すたびにオートとプレミアムオートが切り替わる。通常のオートでも、右のメイクアップボタンを押すと、人物メイクアップや風景メイクアップをかけることができる(プレミアムオート時はそれが自動的にかかる)(写真=右)

 有効1400万画素のCCDを搭載し、レンズは24ミリ相当からの10倍ズーム。ほかの6モデルよりボディがややずんぐりして背が高くて重いが、それはバッテリが大きいから。一般的なコンパクトデジカメのバッテリの容量は900〜1000mAhだが、EX-H15は1950mAhとざっと2倍なのだ。その分持ちはすごくよく公称で約1000枚と断トツ。ちょっとした旅行なら予備がなくてもOKなレベルだ。これが一番のよさ。

photo 背面は円形十字キーの上下に2つずつボタンが重なるというユニークなデザイン。画面はプレミアムオート。顔にキラリとマークがついているのは「人物メイクアップ」がかかりますという印。ちゃんと「三脚を使って人物撮影」というのを認識している。

 もうひとつの特徴は「メイクアップ」機能。「プレミアムオート」モードでは人物と風景に対して「デジタルで化粧をほどこして」くれる。簡単にいえば、首都圏のちょっとくすんだ空もカリフォルニアの青い空に、というか。これはこれでアリかなと思う。デジタルならではの面白さに力を入れている。

 液晶モニタが明るくて見やすいこと、また、メニュー項目が多彩で意外と細かな設定までできるのがカシオらしさだ。


photophoto 「オート」(写真=左)と「プレミアムオート」(写真=右)。レンズはいずれも広角端。サムネイルをみただけでプレミアムオートの効果がわかると思う。空が嘘くさく青い。逆に暗部はちょっと持ち上げられており、地面と空で違う処理が施されていることが分かる。プレミアムオート時は撮影後の処理に数秒かかるが、デジタルの駆使っぷりがカシオらしい。こういうカメラがあってもいい。ただ基本画質はディテールがやや荒れているなどあまり高い方じゃない。
photo こちらは望遠端。灯台の白さにひっぱられてややアンダー気味なのが残念

ニコン 「COOLPIX S8000」

 フラットなボディからせり出てくるようなレンズ部の曲面が美しい優れたデザインのCOOLPIX S8000。このデザインは高級感もあり、特筆すべきかと思う。手に取ってみたくなる。

photophoto グリップ部の滑り止め加工やレンズ部の曲面が特徴。非常にそそるデザインだ。フラッシュは自動的にアップダウンする(写真=左)、高倍率ズーム機としては薄いボディが特徴。ちゃんとマイクもステレオだ(写真=右)

 撮像素子には有効1400万画素のCCDを搭載。レンズは30ミリ相当からの10倍ズームで広角側がやや弱いのは残念。マクロは広角側で約1センチまで寄れる。これはうれしい。

photo ディスプレイは3インチと大きいが、晴天下ではやや見づらかったか。背面は十字キー兼ロータリーセレクタを採用。カメラアイコンが撮影モード切替。ちなみに今回の7機種で唯一人形の顔をなかなか検出してくれなかった

 ウリは高速起動と高速レスポンスで、確かに起動してから1枚目を撮影するまで、という条件では非常に高速だ。ただしそれ以外――撮影モードを切り替えるときのレスポンスなど――はイライラするほど。オートで撮る分には快適だが、ちょっと凝った撮影を望むと悩まされるかも。AFも明るい場所でこそ高速だが、ちょっと暗かったりするとなかなか合わないなど、全体としてのバランスはまだ進化の余地ありか。

 撮影機能としてはスマイル検出や自動追尾もあるし、ダイヤルを使った操作系などいろいろ考えられている。オート時に露出補正をかけると、露出のみならず彩度や色合いをシンプルに変更できるクリエイティブスライダーも装備している。

photophoto 広角端。全体としてはバランスが取れた写真。空の色も派手すぎず地味すぎずいい感じにまとまっている。ただ30ミリ相当なので画角がやや狭くてさびしい(写真=左)、望遠端。四隅の光量低下が気になるがまあ充分にリアルな写りといえよう(写真=右)

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