GPS搭載コンデジは各社から出ているものの、たいていは旅行用高倍率ズーム機(いわゆる旅行向け全部入りカメラ)かアウトドア系カメラ。でも、日常の撮影散歩やちょっとした外出時でも撮影場所は記録して欲しいのである。そうすれば、何気ない写真を見返したとき「あれはどこで撮ったんだっけ」と悩むこともない。
だからPowerShot S100にGPSがついたと知ったときは、おお、とうとうスナップ用コンデジにも来たか、とワクワクしたのだ。というわけで、長期試用リポートの2回目はGPS機能を駆使してみるのである。
市販のGPS搭載デジカメを10台ほど使ってみた立場としていわせてもらうと、その性能や使い勝手はてんでバラバラで、実用レベルに達しているものもあれば、とても日常的には使えないってものもある。
デジカメ内蔵GPSに求めたいのは少なくとも次の4点だ。
S100は「データロガー機能」を持っており、それをオンにしておくと、移動軌跡を「LOG」形式のファイルで記録してくれる。よいことである。そこで、目的地の駅に着いたときにGPSログ機能をオンにし、GPSを意識することなく、7キロに及ぶ撮影散歩テストをしてみた。まあ、8人くらいで歴史を辿りながら散歩するって企画に参加したので「GPSが現在地を取得するまで出発を待ってくれ」とはいえなかったのだけどね。まあ普通はそうだろうと思う。
GPSが働きやすいよう、カメラは常に首から両吊りストラップでぶらさげ、GPSアンテナ部が上を向くようにしておいた。
その結果がこれ。
紫の線が、S100のGPSログを地図上に描画したもの。赤いピンは実際に位置情報付で記録された写真。
ちなみに、出発地点は右下に見える二子玉川駅。駅を出て最初に撮った写真が13時16分、最初に位置情報がついた写真が13時47分で、その間に歩きながら撮影した10枚以上の写真には位置情報がついてなかったのだ。
GPSはその性格上、最初の測位に時間がかかる。確実に測位したければ、最初の測位が完了するまで屋外で静止するのが確実だ。今回はすぐ歩き始めた上に、出発直後の駅近辺は高い建物が多く空が狭かったので、なかなか衛星を捕捉できなかったことを加味しても、これは哀しい結果だ。
ちなみに、ニコン「COOLPIX AW100」のレビューで掲載した地図と同じ日にとったもの。あちらはA-GPSのおかげで最初の測位が速く、駅前から軌跡がはじまってるのが分かると思う(ツボを押さえたタフネス系GPSデジカメ――ニコン「COOLPIX AW100」)。予想したより差が出てしまった。
今回は1969年に廃線となった東急玉川線砧支線を二子玉川駅から砧本村駅跡まで、そのあとは旧岩戸川緑道の暗渠を狛江駅まで辿ろうという趣旨の散歩なので、GPSログがあればどこを歩いてどこで撮影したかを記録できて便利だなあと思って使ってみたのだ。廃線跡や河川跡は地図上に明示されてないので、あとで地図を見返してもどこを歩いたか分からなくなるから。
だから、出発してすぐ撮った「おお、再開発できれいでモダンになった二子玉川にもまだ砧支線の名残が残ってた」写真とか。
線路跡には当時をしのばせてくれるパネルが埋め込まれているとか。
そういう写真に位置情報がついてないのは哀しかったりするのである。
でも、一度、GPS衛星を捕捉すると、あとは順調である。途中で古墳に立ち寄ったり、江戸氏のお墓に立ち寄ったり、猫に出会ったり。
さらに河川跡をたどっていくと、まだ水が流れていた(開渠(かいきょ)だった)ころの護岸跡を発見したり、水門跡を発見したり、興味ない人には何が面白いんだか……って感じだろうけど、まあ、わたしも含めてそういうのが楽しくてしょうが無い人たちの集まりなのでした。
河川跡になるとうっそうとした日陰が多くなるのでカメラ的にはなかなかつらく、S100クラスの高感度と広角に強いコンデジはありがたいのである。
ではちゃんと静止していたら最初の測位までどのくらいかかるのか。東京駅前と皇居前それぞれ上空がある程度開けた場所で調べてみたところ、2分半〜3分弱。2分半以上かかるのはちと遅い。急いでるときは待ちきれない感じ。
GPS状況が分かりにくいのもよくない。画面に表示されるGPS衛星アイコンには衛星を捕捉しているかしていないかの2パターンしかないのだ(多くのモデルは3段階くらいで表示してくれる)。3つ以上のGPS衛星を捕捉してはじめて測位ができるわけで、待ち時間をイライラしないためにもGPS系の状況を細かく表示する機能が欲しい。
一度測位してしまえば、次からは問題ない。電源を入れて何秒か待てばまず大丈夫だ。さらにGPSロガーをオンにすると移動軌跡も記録してくれるので、これを使って大手門から江戸城跡に向かうことに。
こういうとき「ムービーダイジェストモード」が楽しい。撮影する直前の最大4秒を1日分つないで「その日何を撮って歩いたかを振り返る動画」を自動作成する機能だ。これが楽しい。
ムービーダイジェストモードは「シーンモード」の中にある。そのときの撮影は「プログラムAE」同等になるので、それでOKなときは「P」のかわりにムービーダイジェストを、そうじゃないときは違うモードでと撮り分けるといい。
結果はこんな感じ。せっかくの青空なので「ポジフィルムモード」で鮮やかめに。
地図についてはちょいと解説を。ときどきピョンとワープしてる。赤いピンは実際についていた位置情報。軌跡とずれてるのが謎だ。ログと写真につける位置情報が連動してないのだろう。連動させればもっと細かいログをとれるのに。謎だ。
位置情報が100メートル以上ずれてることもあった。高層ビルに囲まれた繁華街ならともかく、それなりに開けた場所だっただけに残念な結果だ。右上から画面の左外に向かって軌跡が一直線に飛んでいるのは、そこで地下鉄に乗り、次の測位点である降車駅まで測位ができず、両者を直線で結んだらこうなっちゃったというだけで、S100が悪いわけじゃない。
帰りの電車に乗るときはロガーをオフにするのがお勧めだ。オンにしておくとバッテリを消費するしね。これは要改善だろう。
とまあ、S100のGPS機能についてあれこれ文句をつけてきたわけだが、実際、10機種以上あるGPS搭載機の中でS100より明らかに「GPS機能が」優れているのはカシオのEX-H20G、ニコンのCOOLPIX AW100、ペンタックスのOptio WG-1 GPSくらいで、他は似たり寄ったりといったところ。逆にGPS機能搭載デジカメの中でどれが一番高画質で撮影してて気持ちいいかというと、それはもうS100なわけで、キヤノンにはぜひGPS機能のレベルアップを図ってもらいたいと思う。
で、S100でGPSを活用したいなら、「最初の測位が終わるまではじっと我慢する」のがコツである。
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