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「GR」はシリーズの集大成であり総決算――ペンタックスリコー

» 2013年04月18日 15時54分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 ペンタックスリコーイメージングは4月17日、リコーブランドの高級コンパクトデジタルカメラ「GR」を発表した。初代の銀塩「GR1」と同じボディサイズにAPS-Cセンサーを搭載し、レンズは35ミリ換算28ミリ相当(F2.8-16)の「GR LENS 18.3mm/F2.8」を採用した。

photophoto 「GR」ペンタックスリコーの代表取締役社長の赤羽昇氏(写真=右)

 2011年9月に発表された「GR DIGITAL IV」から約1年半、ついに登場した後継機の名前には“DIGITAL”も“V”も付いていない。その理由について同社代表取締役社長の赤羽昇氏は、「これまでの技術の集大成であり総決算、シリーズの最高峰という意味を込めて『GR』と名付けた」と明かす。

 デジタルカメラ市場は2010年度から縮小傾向にあり、2012年に全世界の出荷台数が1億台を切った。特にコンパクトカメラで小型・安価な製品が大きく減っている。しかし一眼レフとミラーレスは増えており、またコンパクトカメラの中でもハイエンドな高機能カメラはシェアを伸ばしている。

 その理由について赤羽氏は、「スマートフォンの普及によって、カメラを使う、写真を撮るユーザーの絶対数が急速に伸びた。その中から『より良い写真を撮影したい』『より高い機能を持つカメラで撮影したい』と考える層が一定以上出てきている。これが、ハイエンドコンパクトカメラの比率を高めている」と分析。「その比率はまだまだ少ないが、伸び方が非常に大きい」と期待を寄せた。言うまでもなくGRは、新たなユーザー層も意識している。

photophoto 「GR」

 「ハイエンド分野で重要なことが3つある。1つは高機能で、これは譲れない。そしてデザインは、ボディが洗練されているかや美しいかという点。最後にやはり使いやすさで、持ち運びやすさや使いやすいかが大事になってくる。GRはこれらすべてを兼ね備えたモデルだ。これまでのGRシリーズを支えてきたファンのみならず、ぜひ皆さんに手にして使っていただきたい。名前がGRだからという訳ではないが、まさにGReatなカメラだ」(赤羽氏)

ずばぬけたレンズ性能 機能アップと同時に操作性も向上

 新型GRの特徴についてペンタックスリコーイメージングのマーケティング統括部副統括部長の野口智弘氏は、「なんといってもずばぬけたレンズ性能と、それを受け止める高画質性能をこのサイズに押し込めたこと」と話す。

 GRのレンズ構成は非球面レンズ2枚を含む5群7枚で、絞りを挟んで高屈折低分散ガラス2枚を配置。技術面を担当したリコー研究開発本部VR開発室長の坂口知弘氏は「(ユニット構成に)全体繰り出しを採用したことで、レンズ間の偏心を無くすことができ、安定した性能を確保できる」と説明した。

photophotophoto 「GR」のレンズ構成(写真=左)と駆動機構(写真=中央)。「GXR」から大幅に小型化した(写真=右)

 レンズの駆動機構ではAFモーターと沈胴モーターを分け、それぞれ独立して開発することでAFの高速化だけでなく起動と収納時間の短縮(それぞれ1秒)を両立させている。シャッタースピードも最大1/2000秒(開放時)と高速化させた。

 撮像素子のAPS-Cサイズ(23.7×15.7ミリ)有効1620万画素CMOSは、短射出瞳に対応した新型センサーでレンズユニットの小型化にも貢献。GRと同じAPS-Cサイズのセンサーを備えてレンズ性能も近い「GXR」(18.3mm/F2.5)と比べると、ユニット長は約半分になっている。また周辺画質の劣化も解消されているという。

photophotophoto センサーサイズを一新(写真=左)。ローパスレスによる偽色と色モアレは画像処理エンジンで低減させている(写真=中央)。APS-Cセンサーを搭載しながら、初代GR1と同じボディサイズを実現している(写真=右)

 センサーはレンズ性能の高さを引き出すべくローパスレス仕様となっているが、そこで心配されるのが偽色や色モアレの発生。GRではこの2つを画像処理エンジンで低減させており、坂口氏は「完全に消すことはできないが、輝度振動・色信号から特徴的なパターンを見つけ出し、モアレが出ているエリアをマッピングしている。チューニングを施して、実用的な補正にはなっているだろう」と補足した。またセンサーサイズの大型化については「小型化と画質、携帯性の総合的なバランスでAPS-Cを採用した。センサーサイズを優先したわけではない」(野口氏)という。

photophotophoto 起動時間だけでなく収納時間も高速化(写真=左)。ボタンを追加し、操作性も向上させている(写真=中央、右)
photophotophoto 操作部のアップ

 光学系の進化に合わせて、デジタルフィルターの追加や35mmクロックモード、カメラ内でのRAW現像、フルHD動画の撮影と静止画の切り出しなど、ソフト面の機能アップも著しい。また親指AFボタンとエフェクトボタンの2つを新設。親指AFボタンにはAEロックやAFモードを切り替えるレバーが一体化されており、またエフェクトボタンは絞りプレビューのほか、エフェクトのライブ表示や「Eye-Fi」装着時に2タッチでスマホと連携する機能が割り当てられている。さらに撮影モードダイヤルには、シャッタースピードと絞り値をユーザーが決めると、ISO感度を露出調整を自動で行う「TAv」モードが追加するなど、同社の一眼レフモデルを意識した操作性の向上を図っている。

photophoto Eye-Fi装着時は、エフェクトボタンから2クリックで選択画像をスマートフォンに転送できる

オプションに新開発ワイコン カスタマイズやアップデートも準備中

 GR DIGITALシリーズの魅力と言えばパーツ交換やファームウェアのアップデートによる機能拡張など、長く使うために提供されるサービスの数々も挙げられる。もちろん新GRでもこれらは用意されており、グリップやレリーズボタン、カバーの交換、シャッターボタンのアジャストなどを準備中だ。またファームウェアについては発売前ということで詳細は未定とされたが、GRでも継続して行われるという。

photophotophoto 歴代GRシリーズ(写真=左)。グリップなどの交換サービスも準備中(写真=中央)。予約購入者限定のオリジナルレッドリング(写真=右)

 また別売オプションとして光学ビューファインダー「GV-1」とワイドコンバージョンレンズ「GW-3」、フード&アダプター「GH-3」が用意されている。なかでもワイコンはGR用に新開発されたものだ。

 GRの発売は5月下旬の予定。価格はオープンで、実売価格は10万円以下と見込まれている。発売を記念して、ナノ・ユニバース監修のショルダーバッグ「GRストリートバッグ」やオリジナルのレッドリングをプレゼントするキャンペーンも実施する。

 さらにグループ会社のリコーエレメックスから、GRとPENTAX Kシリーズでコラボレートした腕時計が限定販売することも明らかにされた。GRモデルでは裏蓋に9枚絞りの意匠を盛り込むなどデザインにもこだわっており、2モデルともサファイヤガラスを採用し10気圧防水やストップウォッチ、アラームやバイブなどの本格的な機能を備える。それぞれ150本の限定生産で、販売予定価格は2万4800円。同社オンラインショップのほか、東京・新宿のペンタックスフォーラム、東京・銀座のRINGCUBEと直販チャンネルのみで取り扱う。発売はGRと同じ5月下旬を予定している。

photophoto GR&PENTAX Kシリーズとコラボレートした腕時計
photo 製品説明会には写真家の森山大道氏がゲストとして招かれ、野口氏とトークセッションを行った。歴代GRシリーズのユーザーという森山氏は、「やはり初代GR1が一番記憶に残っている。今度のGRは持った感じが最初のモデルと近い。『これだね』という印象」とファーストインプレッションを語った。5月下旬からGRで本格的な撮影を開始、2013年始めに沖縄で開催される展示会で披露されるという

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