FUJIFILM Xシリーズのフラッグシップモデル、「FUJIFILM X-T1」のライトウェイト版「FUJIFILM X-T10」を持って、ブラブラと撮影する機会に恵まれた。X-T1の特長でもある「防じん防滴耐低温性能」や「連続撮影枚数」などの機能を削ぎ落とし、ギュッとコンパクトなボディになっただけあって、取り回しは実に軽快だった。特に「XF27mmF2.8」を装着した印象は、まるでおもちゃのカメラに見えるほど小さく可愛らしい。本当に軽くてコンパクトなので、日常でのスナップから旅行での撮影にピッタリだと感じた。
このX-T10、ルックスこそお洒落なミラーレス一眼、という雰囲気だが、中身はまるっきり上位モデルのX-T1と同等だ。すなわち本気でバリバリと撮影できる優れたヤツなのである。センサーはローパスレス構造の「X-Trans CMOS II」だし、富士フイルムお得意の「フィルムシミュレーション」や「アドバンストフィルター」ももちろん使える。写真愛好家に定評のある高精細で色乗りのいい“Xシリーズの絵”が楽しめるのだ。写りに関してはX-T1いらず、という印象さえ受けたほどだ。
操作性はそのX-T1を上回る。ボディ背面にある十字セレクターがとても押しやすくなっているのだ。X-T1はここの操作感がイマイチで使いにくかったのだが、適切な形状と節度感を与えられ、使っていてもストレスを感じない仕様になったのが嬉しい。またドライブダイヤルも独立している(X-T1は感度ダイヤルとの二重構造だった)ので、動体撮影時に使いやすく感じた。コマンドダイヤルは節度感こそ軽めなものの、プッシュしてのファンクション呼び出しがやりやすく、径が小さくなった露出補正ダイヤルはちょうどいいトルクで補正をかけることが可能であった。
また本機の特長である「オートモード切替レバー」をシャッタースピードダイヤル脇に備えている。これを「AUTO」位置にすることによって、どんな状態でもフルオートによる撮影が可能になるのだ。移動時などはこれをAUTOにしておき、とっさのシャッターチャンスに備えたり、カメラに不慣れな人に本機を貸す場合などに役立ちそうだ。
最大のウリは「新AFシステム」だろう。像面位相差によるオートフォーカスで以前から速度には定評があったが、それをよりブラッシュアップしたシステムが搭載されたのだ(X-T1もファームアップで対応する)。「シングルポイント」「ゾーン」「ワイド/トラッキング」とAF-S、AF-Cとの組み合わせによって、より広く高速で移動する被写体などへのフォーカシング、追従が可能となった。実際に試してみると確かに精度と速度の向上が感じられ、デジタル一眼レフのオートフォーカスの気持ちよさに近づいた印象を持った。
今回は冒頭でも触れたXF27mmF2.8と、キットレンズの「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」、望遠ズームレンズの「XF55-200mmF3.5-4.8 R LM OIS」の3本をX-T10とともに試したが、どのレンズを装着してもバランスよく、快適に気持ちよく撮影することができた。次回はあのXF56mmF1.2 Rによる作例もご紹介する予定だ。
実際に撮ってみると、X-T1譲りの描写で、水面から錦鯉の鱗まで美しくキャプチャーする。
AFエリアを最小にしてピンポイントでドアノブの中心にフォーカス。質感と光のクリアさが富士フイルムらしい印象だ。
XF55-200mmF3.5-4.8 R LM OISとのバランスもいいと感じた。丘の上から植物越しにマリンタワーを狙う。若干大気が揺らいでいるがイメージ通りに撮れた。
洋館の照明をガラス越しに狙ったが、ローパスレス構造のX-Trans CMOS IIセンサーは切れ味鋭くそれを描き出してくれた。
X-T10は軽量コンパクトなので、街中をブラブラして被写体を探すのにピッタリだ。面白いシーンをどんどん撮影できるのが強みだろう。
X-T10は色再現性が素晴らしい。見た目に忠実な表現だけでなく、富士フイルムお得意のフィルムシミュレーションで、自分なりの方向に振って楽しむこともできるのが嬉しい。
モノクロームの重厚感もX-T10の特長だ。多彩な表現の引き出しを持っているので、フォトグラファーは感性を刺激されるに違いない。
高速で正確なオートフォーカスは、画面のほぼ全域でピントを合わせることができる。自由なフレーミングで被写体に集中できるのがイイ。
夕闇迫るみなとみらい。XF27mmF2.8はパンケーキレンズとは思えない写りを見せる。このサイズ感はX-T10にジャストフィットだ。
波打ち際で華麗にスキムボードに乗る男性。「新AFシステム」はその激しい動きを正確に捉え続けた。
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