「成長は革新から」── TechEdでNetWeaverを売り込むSAP

SAPジャパンは今月末、TechEd '04を都内で開催する。ビジネスプロセス革新のためのプラットフォーム、NetWeaverを国内でも本格的に売り込むのが狙い。

» 2004年11月24日 13時27分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 ITの役割は、ビジネスプロセスの標準化からその「絶え間ないイノベーション」へと進化する ── ERPによってデータの一元化とビジネスプロセスの標準化をリードしてきたSAPは、イノベーションによって企業に成長をもたらすベンダーを志向し、変化に対して柔軟に即応できる統合アプリケーションプラットフォーム、「SAP NetWeaver」を前面に打ち出していく。11月末には、都内で「SAP TechEd '04」を開催し、NetWeaverの売り込みを国内でも本格展開する。

 NetWeaverはアプリケーションのための統合されたプラットフォーム。同社固有の4GLであるABAPとJ2EE標準をどちらもサポートするアプリケーションサーバから始まり、プロセスインテグレーション、ビジネスインテリジェンス、ナレッジマネジメント、ポータル、コラボレーション、モバイルコンピューティンといったさまざまな機能が統合されている。

 これまで手間と時間がかかったアプリケーション間の連携にはWebサービス標準を採用する。変化に対して柔軟に即応できる「SOA」(Service Oriented Architecture:サービス志向アーキテクチャ)を実現するSAPの切り札でもある。

組み合わせで再びイノベーション

 今年、SAPはニューオリンズのSAPPHIREカンファレンスでも「Growth through innovation」を掲げるなど、イノベーションをキーワードとして打ち出している。

 国内や海外を飛行機で移動すると分るが、搭乗手続きを簡素化してくれるキオスク端末が随分と普及した。当初は、ライバル会社との差別化が狙いだったが、普及が進むと生産性改善にフォーカスが移り、コストの削減が期待されている。しかし、航空会社を取り巻く環境は厳しい。このキオスク端末を例にとっても、次なるイノベーションが求められているはずだ。

 一般にビジネスプロセスの標準化が進めば、企業は多くのビジネスプロセスをアウトソースできるようになるが、実際にはそうならない。変化に応じたイノベーションが生き残りには不可欠だからだ。ビジネスプロセスの標準化をリードしたSAPが、絶え間ないイノベーションの領域へと踏み込むのはそうした背景がある。

 優れたエンジンとしてのERPコンポーネント群をSAPが今後とも提供していくことに変わりはないが、必要に応じて組み合わせることが可能なサービスへと昇華していく。SAPでは、企業や組織の壁を越えた新しいシナリオを考えたとき、アプリケーションもさまざまなコンポーネント(サービス)が組み合わされた「コンポジット」型へと進化するとしており、そのためのプラットフォームがSAP NetWeaverだ。

 「標準化されたビジネスプロセスを組み合わせることで再びイノベーションが可能となる」と話すのはNetWeaverのマーケティングを担当する菅沼隆太ディレクター。

世界で1万人がTechEdに参加

 新たなプラットフォームを売り込むには、先ずそれに精通した技術者を育成する必要がある。SAPは10月初め、カリフォルニア州サンディエゴを皮切りに欧州、インドと世界各地でSAP TechEdを連続開催している。今月末の東京と合わせ、1万人以上の技術者を集め、NetWeaverシンパにするのが狙いだ。

 「これまでにも世界各地でTechEdは開催されてきたが、Java関連セッションが数、人気ともにABAPのそれを上回ったのは今年が初めて」と菅沼氏。SAP開発者のオープン化も明確となってきている。

 SAPでは今年、NetWeaverの導入し、複数のコンポーネントを組み合わせた事例を世界で1000社まで拡大するのを目標に掲げている。日本国内の導入事例も100社以上を数え、既に実績のあるソリューションとして売り込む。

 「これからのCIOは単に情報を管理するのではなく、プロセスを変革していかなければならない」と菅沼氏。新しいIT、新しい情報システム部門の在り方が見えてくる。

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