「従業員不満足」がCS低下を招く企業にはびこる「間違いだらけのIT経営」:第16回(3/3 ページ)

» 2006年11月15日 09時00分 公開
[増岡直二郎,アイティセレクト]
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現場軽視の恐怖政治が可能性と意欲を奪う

 例えば作業のアウトソーシングである。ある中堅企業の製造現場を訪ねると、作業ショップごとに異なる外注メーカー名の看板がぶら下がる異様な風景を目にする。ある作業ショップはブラジル人ばかりで、彼らは仲間の情報で給料の高い会社へ簡単に移るという。正社員の構成比が20%位の中で、従業員は誇りを持って仕事ができているのか。外注の人間も同じである。これらは今や珍しくないが、次のようなところにも影響を及ぼしている。

 日本的経営の典型として、作業員が特別に仕組まれた昇格制度の中で、それを励みに技能と人格を磨き後輩へ連綿と継承して行く、また技能オリンピックや公的表彰制度という頂点を目指して研鑽を積みながら技能が維持される、という利点が失われてしまった。インセンティブも伝統も失われる中で、ESは保たれるのか。たしかに日本的経営には、メンツや縄張りを重んずるという非効率的な旧弊もあるが、大部分を否定するところに問題がある。

 さらにES軽視の例として、例えば一度失敗をしたら復活のチャンスを完全に奪われてしまうという減点主義がある。ある製品の設計不良でフィールドチェンジが発生したとき、その製品関係者すべてをまるでDNAが悪いと言わんばかりに否定して、それ以降ずっと主要ポストから関係者を排除した有力企業の例がある。それはいわゆる恐怖政治で、人間の可能性を否定するものであり、ESにマイナス効果しか及ぼさない。

 その他日常業務の中でESにマイナスの影響を与える小さな現象は、数限りなく見られる。

 例えば特に中堅・中小企業で見られる現象だが、社内で格好の噂になっている役員間の確執、役員の部下の好みから発生する派閥とその摩擦など、従業員が快く働けるわけがない。事実、以上に例示した企業ではCSに対する従業員の姿勢が、「本気」でない。

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