有能な議長とITが「うんざり会議」を変える企業にはびこる間違いだらけのIT経営:第19回(2/2 ページ)

» 2006年11月29日 09時00分 公開
[増岡直二郎,アイティセレクト編集部]
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ITによる会議改革性能が向上し格段の進歩

 ITを会議に利用する場合、その目的・用途・運用の仕方いかんでは、毒にも薬にもなり得る。いくつかの代表例を挙げて、検討しよう。まず電話会議。初期投資が不要で費用もサービス料1分25円位、後は通信料である。携帯電話からも使えるという手軽さから、中堅企業A社で導入した。しかし発言が重なる、司会者が不慣れだと要領を得ない、資料も見られないということなどから、A社では今やほとんど使われていない。多くを期待し過ぎないで、割り切って用途を限定すれば使えるだろう。

 グループウェアによる会議もある。費用は、あるベンダー製品のASP版で基本料金が年4万円弱(他社の例で10人用基本セット買取でおよそ8万円弱)とそれほど高くない。時空を問わず利用でき、入力内容が蓄積され、会議名・タイトル・発言内容などから検索できる。グループウェア自体はここのところ進化しているが、実用上はリアルタイムの会議には不向きで、小企業B社では試行錯誤の結果、諸連絡・会議資料事前配布など緊急性を問わない用途に使っている。廃止すべき会議の代替策として、有力候補である。

 ウェブ会議システムは、パソコンとIPネットワークを利用する。価格は、一般的な例でソフトと周辺機器で600万円弱である。ワード、エクセル、CADなどのアプリケーションを参加者で共有できるし、自席のパソコンからしかも時空を超えて参加できるのが良い。一方、機能が多いだけ複雑で、画像・音声の質がネットワークの状態に左右され、そしてサーバメンテナンスが必要になる。

 TV会議システムは、ISDN・光などの回線を利用してTVやプロジェクターに専用端末を接続して利用する。メンテナンスが簡単で、音声と映像の品質がよいので用途が医療・教育など広い分野で期待される。一方、機能が音声・映像に限られ、専用会議室が必要で、MCU(多地点会議装置)など高価な装置を必要とする点が致命傷と言われてきた。しかしオプションとしてパソコンと接続をしてデータ共有ができるし、可動式簡易システムも採用できる。

 アイティセレクト06年7月号で紹介されている日立電子サービスでは、毎朝の全国主要拠点との簡単な連絡会議を、職場の一角にある小型TVで手軽に開催している。

 システム拡充の投資1億円は、約4カ月の出張経費で回収できるらしいが(新設10拠点で、基本的標準価格3千万円弱)、それより情報伝達と経営のスピードアップの効果の方が大きいと、日立電子サービスの役員は言い切る。実は筆者は20年ほど前、中国出張報告を地方から東京へTV会議で行ったことがある。社内で注目されたが、機能や使い方に問題があったのか、意見交換もなく、機械的であるため、TV会議に対する社内の関心は薄れていった。その10年後も、TV会議に対する認識に変化はなかった。今はカメラ・マイクなどのハードや、機能・操作性など格段の進歩を遂げ、臨場感や迫力は他のシステムとは比較にならないほど増している。

うんざり会議撲滅へITの積極導入を

 さあ、「うんざり会議」という間違った経営から脱出するために、すぐ行動を起こそう。

 その次に、間違いなく会議の効率向上・経営のスピードアップに貢献するIT利用の会議に取り組もう。ただし会議の目的を明確にし、どのIT会議を利用するのが最適かをよく検討し、使い方を充分わきまえた上で導入しなければならない。

 IT会議は、確かにFace to Faceに敵わない面はある。微妙な意見や裏の意見、心の通い合い、あるいはブレーンストーミング的な意見交換、会議後の飲み会などの点で不十分なところはある。しかし導入前に、細部についてあれこれ言っていても始まらない。それはそれで、別の解決方法がいくらでもある。IT会議導入を逡巡する理由にはならない。

 ただし、IT会議導入前に「会議そのものの改革」を徹底して行うことが、導入の必須要件である。

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