日本IBM、Jazzベースのソフトウェア開発製品を発表開発現場の負のスパイラルを打破

日本IBMは、ソフトウェア開発を支援する「Jazz」ベースの製品を3月に発売すると発表した。

» 2009年02月23日 17時28分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 日本IBMは2月23日、同社が提唱するソフトウェア開発基盤「Jazz」に準拠した3製品を3月に発売すると発表した。利用企業は開発の報告書の作成や要件定義の効率化、開発品質の向上が図れる。

 発売するのは作業/構成/ビルト管理の機能を一体にしたソフトウェア「Rational Team Concert V.1.0.1.1」。プロジェクトの進ちょくやメンバーの開発状況を自動で収集し、ダッシュボードに表示することで、開発の報告書を作成する負担を減らせる。Wikiやチャットなどのコミュニケーションツールも搭載しており、組織での開発効率を向上させられる。

 Eclipseや.Netなどの開発環境、Windows、IBM System i、System zなどのサーバ環境にも対応。異なる開発環境を統合し、特定の開発環境に限定することなく、ソフトウェア開発を管理できる。同製品を使うユーザー企業に調査したところ「チーム開発の生産性を最大50%向上させた」(日本IBM)例も出たという。

 「Rational Requirement Composer V1.0」は、ソフトウェア開発におけるユーザーのニーズをつかみ、必要な機能や性能を検討してまとめる「要求定義」の作業を効率化するソフトウェア。アイデアや顧客のシステム環境の要求などを文書だけでなく視覚的なイメージで定義、管理することで、具体的な要件に落とし込むことが可能だ。

日本IBMソフトウェア事業、Rational事業部長の渡辺公成理事 日本IBMソフトウェア事業、Rational事業部長の渡辺公成理事

 ソフトウェア開発の品質を向上するソフトウェア「Rational Quality Manager V1.0」も発売する。同製品は各テスト工程における変更について、ソフトウェアの使用とテスト結果がどう関連しているかを管理し、テスト工程の効率化を図る。開発したアプリケーションのテスト状況をWebで一元管理し、テスト結果の確認や問題点の洗い出しができる。

 日本IBMソフトウェア事業、Rational事業部長の渡辺公成理事は「開発を支援するマニュアルは紙ベースで、開発者にはほとんど読まれていない。開発を(紙ではなく)システム側から支援することで、生産性の向上が見込める」と新製品のメリットを述べた。

 価格と発売日は以下の通り。

ソフトウェア名 価格(3ユーザーライセンスが付いたサーバライセンスの価格、税抜き) 発売日
Rational Team Concert V1.0.1.1 Standard 715万円 3月1日
Rational Team Concert V1.0.1.1Express 85万8000円 3月1日
Rational Team Concert V1.0.1.1 Express-c 無料 3月1日
Rational Requirements Composer V1.0 500万5000円 3月1日
Rational Quality Manager V1.0 Standard 286万円 3月11日
Rational Quality Manager V1.0 Express 100万1000円 3月11日

Jazzが目指すもの

 新製品に採用されているJazzとはどのようなソフトウェア開発技術基盤なのか。日本IBMによると、Jazzはメンバー各自が能力を発揮し、チームとしてシステム開発の完成度を高める動きを導く基盤であると説明する。

 例えばソフトウェアの開発環境では、要求管理や変更管理、ソース管理、テスト管理といったツールごとに個別のサーバを立てる。これらのサーバはアクセスの仕組みやデータ管理の手法が異なる。そのため、セットアップや管理コストを投入してもツールを連携できず、開発効率の向上に結び付けられないといった問題が生じてしまう。

 Jazzはこうした開発ツールを統合することで、ソフトウェア開発にまたがるツールのアーキテクチャ(基本設計)を標準化し、Jazzサーバとして提供する。データへのアクセスや管理も標準化される。Wikiやチャットなどを使うことでソフトウェアの出荷を早めたり、開発の業務フローを自動化やプロジェクトを可視化したりすることで、品質の向上やコスト削減を図れる。

 渡辺氏は「国内企業のCEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)はIT投資をコストとしてとらえており、戦略的な投資につなげられていない」とソフトウェア開発の現状を説明する。効率を優先したソフトウェア開発を進めるためITの投資対効果が低くなり、結果として開発コストが縮小する「負のスパイラル」が回っているという。

 今回発表した新製品は「Jazzを使った初めての商用製品」(渡辺氏)になる。開発者の支援だけでなく、経営に直結する戦略的なIT投資を導き、負のスパイラルを打破するものとして、渡辺氏は期待を込めていた。 

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