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» 2009年03月05日 14時50分 公開

アナリストの視点:インターネットの世界にも押し寄せるM&Aの波 (2/2)

[松枝秀如(矢野経済研究所),ITmedia]
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サイトの査定基準

 サイトの査定基準は、サイト売買ビジネスに参入する事業者のノウハウに応じて、具体的な指標が設定されている。これは最も新しいサイト売買の取引形態であり、近年増え続けている低額案件の自動化を目標とした流れに即している。事業譲渡を仲介する企業は、法務および財務に特化した事業評価を実施し、査定基準は公開しない場合が多い。

 Web制作系の企業は、サイト売買による利益に加え、デザインやシステムといったWebサイトの制作価値を見る。このフィルターを通してビジネスモデルやコンテンツの価値を判断するため、小規模のWebサイトでも構造や骨組みがしっかりしていれば、そこを評価する。

 事業譲渡の仲介業者は、ページビューよりも売り上げや営業利益から判断する場合が多い。多数の会員を獲得している大規模なWebサイトにおいて、売り上げの解析から実質の会員を割り出すなど、リスクを取り除いた査定を行う。

 マーケティング/広告業界の企業は、マーケティング資産としての価値を査定し、ページビュー(閲覧数)やユーザー数を重視する。デザインやシステム、プログラムやソースコードは評価基準とみなさない場合が多い。

サイト売買市場の課題

 サイト売買ビジネスでは、買い手の利益が損なわれているという現状がある。買い手はWebサイトについて詳細を知っておかないと損害を被る可能性が高く、仮に契約が成功しても利益を得ることが難しい。サイト売買市場の信用を構築するには、買い手の成功事例を充実させることが必要だ。

 サイト売買に参入する企業がすべきことは、買い手や売り手に「Webは不動産と違う」ということを正確に伝える啓発活動だ。サイト売買の査定基準が不動産と似ている現状において、「Webは無形資産であり、サイト売買ビジネスは不動産取引よりもトラブルが多い」ということを公言していかなければならない。運営能力で価値が変化するWebサイトはモノではない。どのようにWebサイトを収益化するかといった買い手の意欲を高める施策も必要だ。

 Webサイトの適正評価も正しく行うべきといえる。現在は、事業者ごとに独自の評価基準を持ち、Webサイトを査定している。そのため、同じWebサイトでも仲介業者によって異なる売買金額が提示されている。こうした事態は利用者を混乱させ、「サイト売買離れ」を引き起こしてしまう。

 サイト売買ビジネスには業界による統一されたルールが存在せず、法的な整備も整っていないことも問題だ。サイト売買における不透明な要素が多く、不当/不法行為がまかり通っている。具体的には、仲介業者自身による自社事業の資源の拡充を目的とした売却サイトの買いたたき、小額案件の放置によるトラブル、実体のないサイト事業者による市場のかく乱など――などがある。

 サイト売買ビジネスでマッチングやアフターフォローを誠実に行うほど、手間に対する「薄利さ」が際立つ側面もある。人材の育成、売買にかかわる法務事項の取り扱い、財務の専門家など、サイト売買に必須とされる項目は多い。

 こうした背景から、サイト売買市場では独立した第三者機関を必要とする声が上がっている。そして、サイト売買ビジネスにおける業界ルールの策定を目的とした協会も各所で設立されている。サイト売買市場の健全化と発展には、こうした協会による具体的な行動が必要とされるだろう。

サイト売買市場とは

 この調査では、Webサイト単体の売買取引を指す。事業譲渡や企業のM&A(合併と吸収)における人的資源や、大規模な事業内容を含まれるWebサイト事業の移行される取引は含まない。「サイト売買」という概念の設定には、Webサイトを運営する母体同士によるM&Aの場合などを含め、概念が適切かどうかについて異論を挟む声もある。

調査要綱

 矢野経済研究所は次の要綱にて国内サイト売買市場について調査を実施した。(1)調査対象:サイト売買サービス提供事業者及び仲介事業者など、(2)調査期間:2008年5月から12月、(3)調査方法:当社専門研究員による直接面接、および電話によるヒアリングを併用

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