ライバル排除? AppleがGoogle VoiceをiPhoneから締め出す

AppleがiPhone向けのGoogle Voiceを却下し、関連アプリもApp Storeから削除した。同社には自社と競合するアプリを遮断したり、機能を制限する傾向があるとアナリストは指摘する。

» 2009年07月29日 16時12分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 AppleがiPhoneのApp Storeで、Google Voiceアプリケーションと、Google Voiceを利用するサードパーティーのアプリケーションを禁止した。Google Voiceの機能がiPhoneの標準機能と競合するからというのが表向きの理由だ。Appleが常にGoogleと仲良くやっているわけではないという印だ。

 7月18日に電話取材を申し込んだところ、Appleの広報担当ジェニファー・ボーコック氏はコメントを拒んだ。だがGoogleの広報担当者は27日にeWEEKに送った声明文で、Google Voiceが禁止されたことを認め、次のように述べた。

 「Appleは、6週間前にApp Storeに提出したGoogle Voiceアプリを承認しなかった。当社のサービスをiPhoneユーザーに提供するための取り組みを続ける。例えば、モバイルブラウザを利用するといった形で」

 この件は初めTechCrunchが報じた。TechMemeでは追加の記事が取り上げられている。

 27日早くには、iPhoneアプリ開発者のショーン・コバクス氏が、同氏の人気アプリ「GV Mobile」がApp Storeから削除されたことを明らかにした。GV Mobileは、Google Voice番号からアドレス帳の電話番号に電話をかけたり、SMS(ショートメッセージサービス)メッセージを送れるようにするアプリ。

 コバクス氏は自身のブログに次のように記している。「Appleのリチャード・チップマンが今電話で、GV MobileをApp Storeから削除すると知らせてきた。iPhoneに標準装備されている機能(Dialer、SMSなど)と重複するからだ。実際には彼は具体的な機能名は挙げなかったが、GV Mobile全体のことだと思う」

 GV Mobileと同じ機能を持つVoiceCentralも、App Storeで禁止された。だが、記者がGoogleにこの件についてを聞くまで、Googleのアプリケーションも禁止になったことは誰も知らなかった。

 Appleはこの件について沈黙を守っているが、TechCrunchは、AppleがGoogle Voiceアプリを禁止したのは、iPhoneの独占キャリアであるAT&Tのためではないかと推測している。Daring Fireballのジョン・グラバー氏は情報筋を通じてこれを確認した。

 電話会社はGoogle Voiceを警戒している。同技術は無料のSMSと安価な国際電話を提供することで、電話会社のサービスを回避している。

 Enderle Groupのアナリスト、ロブ・エンダール氏は、AppleとAT&TにはGoogle Voiceを脇に追いやる理由があると認めている。同氏は次のように語っている。

 「Google Voiceに関しては、AppleにもAT&Tにも競争上の問題がある。AppleはPC上でのiTunesとSafariの戦略(これらソフトを使って顧客WindowsからApple製品へと取り込む戦略)をAndroidプラットフォームにも応用しようとしており、Google Voiceはそれを覆すからだ。そしてGoogle VoiceはVoIPアプリであり、AT&Tの売り上げを減らす可能性があるからでもある」

 もっとひどいのは、プログラマーにとってどのアプリがApp Storeで承認されるのかを見極めるのが難しいことだとエンダール氏は指摘し、Appleは競合しているように見えるアプリケーションを遮断したり、機能を制限したりする傾向を示していると付け加えた。

 同氏は、音楽ストリーミングアプリ「Slacker」が、iPhoneで機能制限され、飛行機で使えないことを指摘する。BlackBerry版のSlackerは機内でも使える。

 「ここ(シリコンバレー)では、Appleのアプリ承認プロセスを『ロシアンルーレット』に例えている」と同氏は冗談を言う。

 不可解なプロセスとこのような反競争的行為が相まって、開発者らはResearch In MotionのBlackBerry、GoogleのAndroid、PalmのWebOS向けのアプリ開発に目を向けていると同氏は言う。

 GoogleがAppleに屈するはめになったのは、今回のGoogle Voiceの件が初めてではない。Googleは7月23日にiPhone向けの「Google Latitude」をリリースしたが、Webアプリに書き換えなければならなかった。

 「iPhone向けのLatitudeアプリを開発した後で、AppleからWebアプリとして提供するよう要求された。Google Mapsを利用しているiPhone標準の地図アプリとの混同を避けるためだ」とGoogle Mobileチームプロダクトマネジャー、マット・ベールズ氏はブログに書いている。

 GoogleとAppleが近しい関係にあることを考えると、AppleのGoogleのWebサービスに対する冷遇ぶりは興味深い。アナリストは長い間、GoogleとAppleは手を取り合ってMicrosoftに対抗していると考えていた。またGoogleのエリック・シュミットCEOはAppleの取締役を務めている。

 AppleとGoogleが、携帯電話向けWebサービスで対立する道を歩みながら、いつまで親しい関係でいられるか疑問だ。

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