F1のレース戦略を支えるデータとネットワーク、日本GPの舞台裏AT&TとWilliamsが解説(3/3 ページ)

» 2009年10月09日 09時23分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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WilliamsチームのIT戦略

 今回の日本GPは、金曜日が雨、土曜日と日曜日が晴天で、金曜日はF1チームのほとんどが雨用のマシン設定で走行してデータの収集を試みたが、土曜日の予選ではこれらのデータがあまり生かせない天候となり、再度収集しなければならなかった。

 各チームは土曜日午前の最後のフリー走行で晴天用のマシン設定でデータ収集に努めたものの、十分ではなかったとみられる。午後の予選では数台のF1マシンが走行中にトラブルやバランスを崩すなどしてクラッシュしてしまい、3回もの中断が発生した。混乱した状況の中で、Williamsチームの予選順位はロズベルグ選手が11位、中嶋選手が15位だった。

 決勝レースに向けて、各チームとも予選終了後から土曜日に収集できた数少ない晴天時のデータの分析を進めた。決勝レースは予選中の混乱で規則違反があった経緯からスタート順の入れ替えが行われたが、大きなトラブルが見回れることなく始まった。決勝終盤にクラッシュによるアクシデントが発生したが、Williamsチームはロズベルグ選手が5位入賞、中嶋選手が15位完走という成績を手にし、天候に大きく左右された日本GPを最後まで走り切ることができた。

 WilliamsチームのIT戦略についてテイラー氏は、「スーパーコンピュータを活用してF1マシンを開発し、ネットワーク関連ではAT&Tのサービスを活用することでコスト削減を進めている。ここ数年のIT予算に大きな変化はなく、コスト削減効果を開発投資へ回すことができている」と話す。

WilliamsチームITマネジャーのテイラー氏(右)とAT&T副社長のサルベージ氏。英国からテレビ会議で取材に答えた

 同チームが利用するサービスは、VPN接続以外にインターネット接続や電子メールとメールセキュリティ、ファイアウォールなどのゲートウェイセキュリティ、同社公式サイトのホスティングなどに及ぶ。サーキットからのインターネット接続は、セキュリティ対策を実施している英国の工場を経由させて、マルウェアなどの侵入を防止しているという。テイラー氏はまた、仮想化やクラウドコンピューティングなど多くの企業ITが直面する課題にも関心があるといい、「将来的にこうした技術の導入を前向きに検討したい」と述べた。

 F1チームを支援する目的についてAT&Tグローバルセグメントマーケティング担当副社長のロイド・サルベージ氏は、「世界各国のサーキットを転戦するF1の過酷な競争環境は、われわれのネットワーク技術を試す格好の場所。いかなる通信環境であっても、英国のチーム工場にいるのと同じ安定した通信品質をサーキットのスタッフへ提供するのが最大の使命だ」と説明した。

 AT&TはWilliamsチーム以外にも、F1の取材やテレビ報道を手がけるメディア企業各社や、F1の運営に携わるさまざまな企業にサービスを提供する。Williamsチームへのサービス提供は今後数年間も継続する予定だとしている。

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