「Microsoftは検索のロングテールを軽視した」――Bing担当幹部

Microsoftはロングテールの軽視でGoogleに後れを取ったが、潮流がヘッド部分に戻りつつある今、Bingで人間の思考パターンについていける検索エンジンを目指すとメディ上級副社長は語った。

» 2010年03月29日 16時34分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 米Microsoftが検索エンジン市場で米Googleに大きく後れを取ったのは、あまり一般的でない多数のクエリに対して適切な検索結果を提示できなかったからだ――Microsoftの上級幹部は3月25日、ニューヨーク市で開催の検索エンジン年次カンファレンスSearch Engine Strategies(SES)においてこのように述べた。

 オンラインオーディエンス部門でMicrosoft Bingを担当するユスフ・メディ上級副社長によると、検索市場でGoogleがMicrosoftのはるか先を行っている最大の理由はそこにあるという。Googleは米国の検索市場で65%のシェアを確保しているのに対し、Microsoft Bingのシェアは11.5%だ。

 Microsoftはインターネットと検索分野に出遅れたとするキーノートセッション司会者の指摘に対し、メディ氏は「われわれは当初、ロングテールにフォーカスする必要があることを理解していなかった。われわれは実際、クエリのヘッド(先端部分)ばかりにフォーカスしていた。しかしロングテールの方がはるかに重要だったのだ」と語った。

 Microsoftの場合、ロングテールではなくヘッドにフォーカスしたというのは、ポピュラーなクエリに対する検索結果を提示し、あまり一般的でないクエリに対応しなかったことを意味する。しかしクエリのロングテール部分の方が大量のトラフィックを生成し、この11年余りにわたってGoogleにより多くの収益をもたらした。

 その結果が、検索分野におけるMicrosoftの失われた10年間だった。10カ月前には、検索市場でのMicrosoftのシェアは8%にまで低下した。Bingは2009年6月の公開以来、Microsoftの検索シェアを3.5ポイント伸ばした。Googleのシェアは現状維持ないしは微増で、Yahoo!のシェアは低下した。つまりYahoo!のシェア減少分をBingが奪う形になったわけだ。

 メディ氏によると、1年前の時点で毎日1秒当たり4つの新しいURLが生まれていたという。

 「ロングテールは爆発的に増加しており、これを巡回、インデックス化、意味付けする必要があるのだ。毎月、Bingに出現するクエリの3分の1が初めて登場するクエリだ。その大部分は再び現れることがない。これらは風とともに去っていくようなものだ。そういった新しいデータの流れを素早く把握し、瞬時に適切なデータをインデックス化できるようにするというのは、極めて困難なチャレンジだ」と同氏は語る。

 メディ氏が述べた量的チャレンジに対処したことが、Googleがその圧倒的な検索シェアを拡大・維持した大きな理由の1つだ。この市場シェア、そしてGoogleが育てた巨大なデジタル広告市場が年間230億ドルの売り上げにつながった。

 「新しい形態の非構造型データの出現で問題がさらに難しくなってきた」とメディ氏は続ける。「TwitterのフィードやYouTubeの動画のような閉鎖的なデータ、あるいは容易に巡回できないデータをどうやって収集するのか、URLを理解できなければどうなるのか、といった問題があるからだ」

 メディ氏によると、潮流はポピュラーなクエリというヘッド部分の方に戻りつつあるという。MicrosoftがTwitterWolfram|Alpha、そして人気の高いロケーション共有サービスのfoursquareと提携した理由もそこにある。

 検索はもともと、ナビゲーションのために用意されたサービスであり、Googleのランキングアルゴリズム「PageRank」は検索結果の精度を高めるための技術だ。その後、検索は販売促進や高度な検索(単なるキーワードではなく複数の文章による検索など)のためのエンジンとして利用されるようになってきた。

 従来の検索クエリが目的のWebサイトを見つけるのが目的であったとすれば、新タイプのクエリは「医療制度に対するオバマ大統領の立場は?」とか「あるタイプの膵臓(すいぞう)ガンの原因は何か?」といったようなものだ、とメディ氏は説明する。

 今日の検索技術は検索に対する人間の思考パターンについていけず、あいまいなクエリに対応できない。メディ氏によると、Bingではユーザーの意図を読み解くという課題を解決しようとしているという。これは、ユーザーが見つけたいと思っていることと検索語が一致しなくても、ユーザーが検索しているものを見つけることを意味する。

 「これはユーザーとの対話に近い。われわれはユーザーの意図を理解し、その意図をタスクそしてアクションに対応させることを目指している」とメディ氏は語る。

 この点ではMicrosoftの幹部たちの考えは一致しているようだ。Bing担当ディレクターのステファン・ワイツ氏も最近、eWEEKの取材で同様の見解を述べている

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