Googleの元幹部だった米連邦政府の副CTOが、Google Buzzのプライバシー設定でうっかりGoogle関係者とのつながりを公開してしまった。
これはお笑い記事だ。
米Googleの元トップロビイストで現在はホワイトハウスの副CTO(最高技術責任者)としてインターネット政策に関してバラク・オバマ大統領に助言をする立場にあるアンドリュー・マクラフリン氏が、Google Buzzで自分の連絡先が公開されているのに気付いて仰天したらしい。
BuzzはGmailユーザーの連絡先を利用したソーシャルWebサービスだ。当初、Buzzはデフォルトでユーザーの連絡先がGoogleプロフィール上で公開されるようになっていた。
これは多くの人々の不評を買った。電子プライバシー情報センター(EPIC)はGoogleを批判した。集団訴訟も起きた。
米連邦取引委員会(FTC)はこの問題を調査中だ。Googleは、プライバシーに対するユーザーの不安を軽減するために数々の修正を行った。
アンドリュー・ブライトバート氏の「Big Government」ブログでマクラフリン氏のケースがどう扱われているか見てみよう。
マクラフリン氏のBuzzプロフィールは、同氏がGoogleならびにBuzzの連絡先に協力を要請した後で非公開になった。このプロフィールには、Googleのプロダクトマネジャー、上席ロビイスト、弁護士など30人近いGoogle社員が含まれていた。同ブログは次のように記している。
同氏はホワイトハウスの公式の電子メールチャネルの外で、同氏のGmailリストに載っている多数のGoogleロビイストと連絡を取り合うことによって、こういった(訳注:Googleに有利な)政策を策定しようとしているのだろうか。それは誰にも分からない。マクラフリン氏がGoogle時代の友人や同僚と連絡を取るというのは、必ずしも不合理なことではないからだ。
もちろん決して不合理なことではない。それにパラグラフの冒頭部分はまさしく、根拠のないうわさや憶測をかき立てるような記述だ。マクラフリン氏の連絡先リストに誰が含まれていたかと騒ぎ立てるというのは、何もないところに無理やりドラマを仕立て上げるのが狙いなのだろう。そうでなければ、単に間抜けな指摘にすぎない。
はっきり言わせてもらおう。ある人が企業に何年か勤務する間に友人や同僚と親しくなったとする。彼がその企業を去るとき、在籍中にできた友人や知人と縁を切るのが当然なのだろうか――それもすべて、妥当性を欠く行為をしていないことを装うためだけに。
Big Governmentブログの批判は、まったくのたわ言だ。理想的な世界であれば、米国の片田舎で開かれるドッグショウでさえも、政府内の人間が特定の参加者に肩入れするようなことはないだろう。だがわれわれは理想世界に住んでいるのではない。
公益と私益の衝突は世の中にあふれている。それを撲滅しようというのは、堤防の穴に指を突っ込んでふさごうとするようなものだ。
同ブログは記事の最後の方で、その主張を明確にしている。
現在、大統領の執務室に勤務するGoogleの元トップロビイストが以前の雇用主のプライベートな電子メールとソーシャルネットワーキングツール(GmailとBuzz)を使って、Googleの多数のロビイストおよび弁護士とプライベートに連絡を取り合っているというのは、疑念を呼び起こすものだ。彼らは内密で何を話しているのか? 恐らく、Googleのライバルに影響するような政策を策定しようとしているのだろう。
これも卑劣な批判だ。妥当性を欠く行為、不正行為、あるいはマクラフリン氏とGoogle社員との間で企てられた陰謀の証拠がない限り、これはNational Enquirer(訳注:ゴシップ系タブロイド新聞)も顔負けのでっち上げだ。
それにマクラフリン氏は、かつてGoogleで働き、現在はWeb政策を論じる立場にあるからといって、Google上に置かれた自分のデータをすべてMicrosoft、Yahoo!あるいはその他の電子メールプロバイダーに移し替えなくてはならないのだろうか。わたしに言わせれば、そんな必要はない。
それでもこういったたわ言に共鳴する人がいるようだ。
消費者団体Consumer Watchdogのジョン・シンプソン氏はすぐさま陰謀説を支持し、情報自由法に基づいてマクラフリン氏とGoogleとの間の電子メールのコピーを要求している。シンプソン氏は次のように述べている。
マクラフリン氏の任命は発表当初から問題だったが、同氏が元雇用主との親しい関係を続けながら、ホワイトハウスのインターネット政策の責任者を務めるというのは、さらに由々しき問題だ。同氏と元雇用主や元同僚との間で具体的にどんなメッセージがやりとりされたのかを国民は知る権利がある。
わたしに言わせれば、国民がそんなことを知る必要はない。どうでもいいことではないか。
Googleはオバマ政権から特別な計らいを受けてはいない。むしろ徐々に政府の介入を受けているのが実情だ。
司法省はGoogleブック検索に反対している。連邦取引委員会(FTC)はこの問題の原因となったアプリケーション(Buzz)を調査するとともに、7億5000万ドルに上るAdMob買収提案の妥当性を審査している。
実際、わたしの予想では、Googleがいつ独禁法訴訟の一撃を食らってもおかしくない状況だ。同社に対する世間の認識が変わったのだ。人々はGoogleをMicrosoftのコンシューマーフレンドリーバージョンのように見ている。残念なことだが、それが循環を繰り返すこの業界の常なのだ。
企業があまりに巨大化すると、より強力な権威の介入を呼び込むようになるのだ。それがビッグブラザーなのかもしれない。
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