Googleは、ユーザーのプライバシーを最優先にしつつ、ロケーションベースサービスを融合させたレコメンデーション機能を提供しようとしている。
米Googleは「Google Latitude」や「Google Buzz」などのロケーションベースのサービスを利用し、異なるWebサービスを結び付けることによってレコメンデーションを提供することに新たな価値を見いだしている。
しかし検索エンジン大手の同社は、こういったサービスに伴うプライバシーへの懸念に対処することも同様に重要だと考えているようだ。
Google Maps for MobileとGoogle Latitudeを担当するプロダクトマネジャー、スティーブ・リー氏は、ロケーションベースのマッシュアップを次のように説明している。
クリスとロジャーは友人同士で、2人ともGoogle LatitudeやGoogle Buzz for Mobileといったロケーションベースのサービスのユーザーだとする。クリスは映画「シャッター アイランド」の評価を口コミサイトのYelpで検索した。これは彼がこの映画に興味を持っている可能性を示している。友人のロジャーは、チケット販売サイトのFandangoでシャッター アイランドのチケットを購入した。Google LatitudeあるいはBuzzは、彼らがYelpやFandangoで行ったことについて自動的に通知を受け、クリスとロジャーが友人であると推測する。ロジャーが映画館の駐車場に入ると、クリスはLatitudeまたはBuzzから、ロジャーがシャッター アイランドを観るために駐車場に到着したという通知を受け、そこでロジャーと落ち合うか、あるいは映画に付き合ってもいいか電話で聞いてみればどうかという提案が示される。
こういったロケーションベースのサービス連係は、Google LatitudeやGoogle Buzz for Mobileといったアプリケーション、さらにはFoursquare、Gowalla、Brightkite、Looptなどの新興企業が提供するサービスがニッチからメインストリームに進出するのを促す可能性がある。
リー氏によると、こういったロケーション型マッシュアップのシナリオは非常に魅力的だという。「Googleはこんなサービスをユーザーに提供したいのだ。ユーザーが異なるソースにまたがる情報を探すというシナリオでは、エンドユーザーに対して透明性を確保することが重要なポイントだ」と同氏は語る。
この仕組みがうまく機能するためには、アプリケーションからレコメンデーションを提供するユーザーと、レコメンデーションを受け取るユーザーとの間の相互理解も必要だという。
不気味さという要素を軽減する必要もある。こういったサービスの多くは、驚異的、魅力的である一方で、不気味さが伴う。すべて透明で何も包み隠さないようにすれば、ユーザーはその情報がどのようにして得られたのかが分かり、不気味さはほとんど取り除かれる。また、オプトイン方式にするかオプトアウト方式にするかを決め、“これにかかわりたくない”といえる選択肢をユーザーに提供する必要もある。不気味さという要素を軽減するには、ユーザーがきめ細かくコントロールできるようにする必要がある。
プライバシー保護団体の主張とは裏腹に、Googleはユーザーのプライバシーのことを真剣に考えているようだ。同社は不気味さという要素を緩和するために、ソフトウェアをリリースする前に長期間にわたってテストを実施している。
例えば、友人の居場所を見つけるアプリケーションであるLatitude用に「Location History」機能をGoogleがリリースしたのは昨年11月のことだが、リー氏はLatitudeが昨年2月に立ち上げられて以来、同機能を試してきたという。
リー氏は同機能の印象を次のように述べている。
Google MapsとGoogle Earth上でLocation Historyを表示したときのわたしの第一印象は、これはすごくクールで、ものすごい可能性があるというものだ。しかし不気味だったことも確かだ。このすごいという要素と不気味という要素が交ざっているのはいいことだ。なぜなら、この情報をどのように共有するかという選択肢をユーザーに与えることに関するわれわれの方針を決定するのに役立つからだ。
リー氏のチームはこのことを念頭に置き、セカンドオプトイン方式を採用したLatitudeのLocation History機能とLocation Alerts機能を開発し、ユーザーが位置データを共有することを明示的に選択しなければならないようにした。さらに、ユーザーはLocation HistoryをKMLファイルとしてエクスポートする、このデータ全体を1クリックで消去する、特定の日付範囲または特定の地点だけを選んで消去するといったこともできる。
これは、電子フロンティア財団(EFF)などのプライバシー保護団体の懸念を和らげるための対策だ。既にEFFは、Google Latitudeのようなロケーションベースのサービスによってコンシューマーのプライバシーが侵害される可能性があるという懸念を抱いている。LatitudeのLocation Alerts機能とLocation History機能は、ユーザーに関する貴重な情報、すなわちユーザーの居場所に関する情報を提供するからだ。
こういった懸念があるものの、Googleはロケーションベースのアプリを推進するのをやめるつもりはなさそうだ。
リー氏は、Google LatitudeとGoogle Buzz for Mobileはユーザーが「出会う」のを手助けするものであり、「Googleは今後も、場所に関する内容豊富な情報を引き出すために時間とリソースを投入し、友人やユーザーが自分のいる場所に関する情報を人々に伝えられるようにするつもりだ」と話している。
Googleにとっては、そこで位置情報とソーシャルネットワークが真に交わることになるようだ。しかしこのビジョンが、電子商取引も含めたロケーションベースのマッシュアップで具現化されるかどうかは不明だ。
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