「iPhone 4G」はAppleのビジネス市場進出の切り札か?

次期iPhoneにうわさ通りチャット用カメラが付いているのであれば、同社はビデオカンファレンス機能でビジネス市場に切り込むつもりかもしれない。

» 2010年04月22日 16時27分 公開
[Nicholas Kolakowski,eWEEK]
eWEEK

 iPhoneは相変わらず米Appleの収益拡大の原動力として活躍しているが、同スマートフォンの次期版に搭載される新機能は、同社がまったく新しいビジネス分野に進出するチャンスにつながる可能性がある。ビデオソーシャルネットワーキングやビデオカンファレンスといった新機能がそれだ。

 IT系ブログのGizmodoは4月19日、カリフォルニアのバーで拾ったというデバイスの詳細を掲載した。同ブログによると、これはiPhoneの次期版だという。この記事は、「表側に搭載されたビデオチャット用カメラ」「裏側のフラッシュ付き大型カメラ」「標準SIMではなくマイクロSIM」「高解像度ディスプレイ」「上部ヘッドフォンジャックの横に組み込まれたノイズキャンセル用の第2マイクらしきもの」などを新iPhoneの特徴として紹介している。

 Appleは、Gizmodo編集長のブライアン・ラム氏に送付した4月19日付の書簡の中で、このデバイスの所有権を主張したと伝えられている。この書簡もGizmodoに掲載された。既に多数のメディアがこのデバイスを「iPhone 4G」と呼び始めている。

 このデバイスが本当に次期iPhoneであるとしたら、この新ハードウェアはAppleのモバイルビジネスに大きな効果を与える可能性がある。

 米調査会社Technology Business Researchのアナリスト、エズラ・ゴットハイル氏は「Appleは表側のビデオカメラを活用したサービスを紹介することで、iPhoneの発表に彩りを添えるだろう」と4月21日付のリサーチノートに記している。「ビデオソーシャルネットワーキング、ネットワークゲーム、ビデオカンファレンス用のネットワークプラットフォームには市場機会が存在し、Appleはソフトウェアとデザインに対するその特異な能力でこの機会に対応できそうだ」

 ビデオカンファレンス用プラットフォームのビジネス展開に関して、ゴットハイル氏は「重要なアプリケーションに加え、サードパーティー向けに開発プラットフォームを提供することにより、Appleは長期的な継続を期待できる魅力的なサブスクリプションサービスを開発できるかもしれない」と述べている。さらにこのプラットフォームは、Appleが企業市場に食い込む新たなチャンスを提供する可能性もある。企業市場にはビデオカンファレンスに対するニーズが確かに存在するからだという。企業市場ではスマートフォンとしてはBlackBerryが大きなシェアで優位を確保している。

 iPhoneはAppleの直近の四半期の好調な販売と収益に寄与した。同社が4月20日に発表した決算によると、2010年第2会計四半期のiPhoneの販売台数は875万台だった。同四半期の総売上高は135億ドル、純利益は30億7000万ドルと、ウォール街の売上高予測(120億ドル)を上回るとともに、前年同期の売上高(90億7000万ドル)と純利益(16億7000万ドル)と比べて大幅に増加した。

 「iPhoneの販売台数は前年同期比で131%増加した。これには、アジア太平洋地域での販売台数が474%増えたことが貢献した」とゴットハイル氏は記している。「Appleの巧みなブランドマーケティング、そして同社がメディアと世間の関心を引きつけたことが、世界的な景気回復に伴う消費者心理の改善と相まってiPhoneの販売拡大につながった」

 iPhoneをAppleのさらなる成長の原動力として位置付けているアナリストもいる。

 米株式市場調査会社Broadpoint AmTechのアナリスト、ブライアン・マーシャル氏は、4月21日付のリサーチノートに「2010年のAppleの動向で最も興味深いのは、米国外でのiPhoneの売り上げ拡大だ」と記している。「iPhoneは米国市場で昨年9月にAT&Tの加入者ベース(約6500万人)の5.0%に浸透してピークに達したが、海外では150社余りの海外キャリアパートナーの加入者ベース全体(5億2500万人)の約1.5%に浸透しただけだ」

 しかしAppleは、Google Androidといったライバルとの競争の激化にも直面している。Androidは、近く登場する台湾のHTC製「DROID Incredible」などのハイエンド端末にも採用される。これらのAndroidスマートフォンや、Microsoftの「Windows Phone 7」といった競合製品は、モバイルアプリケーションとWebコンテンツをインタフェースに統合するなど、iPhoneにとって大きな脅威となっている。

 Apple幹部は決算報告の際に、新iPhoneのハードウェアとソフトウェアの見通しについては言及を避けた。同社CFO(最高財務責任者)のピーター・オッペンハイマー氏によると、Appleではマルチタスキングなどの新機能を搭載したiPhone OS 4に“熱烈な期待”を寄せているとしながらも、2010年にリリースされる端末については「製品移行」とあいまいな表現にとどまった。

 いずれにせよ、Appleがモバイルハードウェアをアップグレードする可能性は高く、そこには競争戦略を再び修正し、同社の持続的成長に不可欠な新たな収入源を確保しようという狙いがあるようだ。

企業向け情報を集約した「ITmedia エンタープライズ」も併せてチェック

Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.

注目のテーマ

あなたにおすすめの記事PR