3億4000万円のストレージ伴大作の木漏れ日(2/2 ページ)

» 2010年05月18日 08時00分 公開
[伴大作,ITmedia]
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2つの潮流に共通するもの

 大艦巨砲主義のように映るIBM、EMCの製品とIsilon、LeftHandの製品――。この2つの潮流は一見異なっているように見えるが、底流にはインターネット上のトラフィックの爆発的な増加、企業のビジネスモデルの変化がもたらした「情報爆発」および「クラウドコンピューティング」への対応があることを見逃してはならない。

 近年はマルチコアのプロセッサが常識となり、VMwareのようなサーバ仮想化ソフトウェアが注目を集め、CPUの仮想化が一般的になってきた。これにより、データを置いている肝心のストレージを仮想化していないと、システム全体のパフォーマンス向上が期待できなくなる。

 さらに、クラウドコンピューティングの技術が浸透すると、データベースの構造も変わらざるを得なくなる。サーバの仮想化によりさまざまな処理ができるようになっても、用いるデータが旧態依然としたストレージに収められていたならば、クラウドコンピューティングの実現は絵に描いた餅になってしまう。

 企業がクラウド化への対応を考えるなら、ストレージにおけるデータ処理に対する発想を、スケールアップからスケールアウトに変えなければならない。大量のCPUに対し、少数の高性能ストレージが必要とされるのは、こうした背景によるものだ。

 さらに見逃してはならないことがある。われわれはオンライン処理が金融や流通、運輸部門で使われるという固定観念に支配されがちだ。

 だが現在は、インターネットを前提にあらゆるシステムを再構築する必然性が迫っている。テキスト、数値、画像、映像などのデータの重要性と使用頻度を考え、セキュリティを一元的に把握しながら、誰もがどこからでも利用できるシステムを再構築する必要がある。特に、これまで重視されていなかったコピーや手書きメモ、会話などの非構造化データは、SOX法の制定以来、重要度を増している。

情報爆発が起こらない日本

 こうした潮流は、米国で起こっている話にすぎないと考えがちだ。確かに、日本では一部の産業や特定の用途に限られた話ではある。日本は世界がうらやむネットワーク大国だが、それはインフラが整っているという話にすぎない。肝心のコンテンツやサービス、それを実現する機材やソフトウェアの多くは、米国に頼っているのが現状だ。

 Webメール「Gmail」や動画共有サイト「YouTube」を展開する米Google、ネット通販「Amazon.com」を運営する米Amazonなどは、米国に本社を構えている。極論すると、日本にあるインフラを利用し、金もうけをしているのは、日本ではなく米国企業なのである。

 さらに、日本の著作権やデータの保証に関する法律は、先進諸外国と異なっている。そのため、日本製のコンテンツが日本ではなく海外のサーバに置かれることが多い。対して、海外のデータは日本からアクセスできない上、日本に置くことが禁じられている場合もある。

 日本の企業は総じて、インターネットへの対応に消極的だ。B2Bにおけるビジネスはそれなりに立ち上がっているが、肝心のB2CやB2B2Cの分野は、欧米と比べて完全に立ち遅れている。この結果、日本企業のデータ増加量は欧米企業と比較してもはるかに小さい。僕が取材した範囲では、ある大手企業の情報システム部が掌握している2009年度のデータ増加量は、2005年度と比較しておおむね30%程度にとどまっている。

 IBMやEMC、そしてIsilonのストレージについて、「あくまで米国の話だから」とないがしろにしてはいけない。これらの巨大なストレージ製品は「新しい時代の幕開け」の象徴だ。

 この「新しい時代」では、これまでは誰も考えなかったさまざまなコンテンツが、インターネットという網の中で巨大なデジタル情報として貯蔵され、流通する。極めて短時間で進化した世界だ。日本で情報爆発が起きなかったのは、この世界の潮流に完全に乗り遅れたことを示している。

 日本の企業は、世界的なコンピュータとコミュニケーションの利用という側面で海外に大きく水をあけられてしまった。それは技術や法制度の面、そして何よりもそれらの製品を販売しようというマインドにおいて、海外と差がついてしまったことを示している。

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