MicrosoftとAdobeの合併の可能性は低そう――だが実現すれば企業ユーザーにも恩恵

このうわさの実現可能性は低いが、Windows Phone 7でiPhoneに挑むMicrosoftとFlashでAppleと敵対するAdobeの組み合わせには説得力がある。

» 2010年10月12日 15時25分 公開
[Nicholas Kolakowski,eWEEK]
eWEEK

 米Microsoftが米Adobe Softwareの買収に関心を示しているとのうわさに対し、Microsoftはコメントを避けているが、アナリストの間ではこの動きがどんな影響をもたらすかについて議論が盛んになっている。

 「MicrosoftとAdobeはいずれも非常に歴史の長い企業で、両社のソフトウェア製品はほとんどあらゆるPCに組み込まれているが、近ごろは両社とも脇役に追いやられている。米Googleと米Appleにスポットライトが集中しているからだ」――英調査会社Ovumの主席アナリスト、リチャード・エドワーズ氏は10月8日付のリサーチノートでこう述べている。「現在、モバイルアプリビジネスはソフトウェア開発企業にとって極めて重要な分野となっているが、MicrosoftとAdobeはまだこの市場で大きな存在感を示せないでいる」

 「もしMicrosoftとAdobeが合併することになるとすれば、この取引を促しているのはモバイルアプリ市場だ。両社ともこの市場で大成功を収める必要があるからだ」とエドワーズ氏は記している。

 「MicrosoftがAdobeを買収すれば、“プロシューマー”市場でのMicrosoftの立場が強くなるのは間違いない。Adobe LiveCycle(同社のバックエンド業務統合プラットフォーム)がMicrosoft SharePointと本格的に連係すれば、企業市場も恩恵を受ける」と同氏は指摘する。

 しかし合併をめぐる憶測は沈静化しつつあるようだ。The Wall Street Journalは10月8日付のコラム記事(リンク先を読むにはログインが必要)で、「MicrosoftはAdobe買収に必要な巨額の資金は持っているだろう。だが取引成立の可能性は低いと思われる」とする米Janney Capital Marketsのアナリストの発言を引用している。

 このうわさの発端となったのは、Microsoftのスティーブ・バルマーCEOとAdobeのシャンタヌ・ナラヤンCEOがAdobeの本社で会い、Microsoftによる買収の可能性について話し合ったとNew York Timesの10月7日付のコラム記事で報じられたことだ。両社はAppleへの対抗策についても検討したと伝えられている。

 Adobeの広報担当者は「AdobeとMicrosoftは、全世界で何百万もの顧客を共有しており、両社のCEOは時々会っている」とNew York Timesに語ったらしい。同広報担当者は、会合があったことは否定しなかったが、両CEOの間で何が議題に上ったのかについてはコメントしなかった。

 Appleのスティーブ・ジョブズCEOがiPhoneなどの端末でAdobe Flashの利用を禁じた理由を明らかにしたのを受け、Adobeは今年、Appleに反撃する姿勢を打ち出した。ジョブズ氏の攻撃に対し、数社の企業がFlash対応を自社端末の優位性として一斉に宣伝し始めた。例えば、韓国のSamsungは、スマートフォン「Galaxy S」および開発中のタブレットPC「Galaxy Tab」はFlashをサポートしているので“完全なWeb”をブラウズできると宣伝している。インターネット上で人気の高いWebサイトの多くが、リッチなコンテンツのレンダリングにFlash技術を利用している。

 Microsoftの次期スマートフォン「Windows Phone 7」は、Appleと市場シェアを争うため、バルマー氏にとってはAppleの敵であればどの企業とでも会談を(交渉も)行う理由がさらに増えることになる。

 米eWEEKが10月8日(現地時間)にMicrosoftに取材したところ、同社の広報担当者は、AdobeとMicrosoftとの会合があったのかどうか、また両社がAdobe製品をWindows Phone 7用に最適化する方法について話し合ったのかどうかを明らかにしなかった。

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