スキルの可視化で仲間を選べ――Salesforceが語るチーム作りの「ゲーム化」とは

社員のスキルレベルをゲームのように可視化し、プロジェクトごとに最適なチームメンバーを選ぶ――こうした「企業におけるゲーム化」論を、Salesforce.comのチーフサイエンティストが紹介した。

» 2011年10月06日 18時51分 公開
[本宮学,ITmedia]

 ユーザーの商品・サービスへの理解度/利用度をスコア化し、段階ごとにプレゼントを贈呈する――このようにゲーム特有の「人を引き付けるための工夫」をゲーム以外の場に応用する「ゲーミフィケーション」というコンセプトが注目されている。消費者の商品への理解や興味を深めるための手段として、これまで主にコンシューマー向けビジネスを展開する多くの企業から注目を集めてきた。

 だが今後は「対コンシューマー」のみならず、「企業の内部、さらには企業の枠組みを超えた広域のビジネス環境におけるゲーミフィケーションが重要になっていく」――というのが、このほど来日した米Salesforce.comのJP・ランガスワミ チーフサイエンティストの考えだ。

「甘いジュース」にはすぐに飽き、いつかは毒に

photo JP・ランガスワミ氏

 あらゆるビジネスにおいて、「顧客価値を高めること」が大きな課題であることは言うまでもない。だが同氏によると、ユーザーに対して直接的な「面白さ/うれしさ」を与えるという従来のゲーミフィケーションの仕組みでは、短期的には消費者の興味を喚起させることはできても、継続的なビジネスの成果を得ることは難しいという。

 「いくらファッショナブルで面白い仕組みを作ってユーザーに提供しても、それは子どもに甘いジュースという“ご褒美”を与えるようなもの。いつかは飽きられてしまうし、長期化した場合は毒になる可能性もある」

 では企業はどのようにして顧客と向き合うべきなのか。この課題に当たっては、まずは企業の内部におけるプロジェクトチームを活性化させる必要があるとランガスワミ氏は指摘する。

 「重要なのは、企業と顧客の距離を縮め、複雑な顧客ニーズに迅速に対応できる体制を作ること。そのためにはプロジェクトチームのメンバー1人1人が内発的に仕事の質を向上させ、高い顧客価値を生み出せるようにする仕組みが求められる」

個人のスキルを可視化し、働く“文脈”を与える

 「チームメンバーに自発的に仕事を変えさせる上では、各メンバーのスキルや立ち位置を可視化し、働くためのコンテクスト(文脈)を与えてモチベーションを向上させることが重要だ」とランガスワミ氏。つまり、ゲームで言うところの「ジョブ(職種)」や「習熟度」などを可視化し、プロジェクト内容に対して最適なチームメンバーを選定。さらに各個人の「レベルアップ」(仕事の成果)を可視化することが、チームメンバー1人1人のモチベーション向上につながるという。

 実際には、第3者機関による資格や能力の認定書、またはスキルの自己申告+企業内SNS上での同僚のレビューといった「バッジ」を外部へ表示し、それに基づくプロジェクトメンバーの選定を実施。さらにプロジェクトの実行に当たっては、ビジネス管理ツール(ダッシュボード)によって業務状況を確認しながら進めていく――といったモデルを想定する。

 「企業にとっては今後3年間ほどは、企業内SNSやビジネス管理ツールなどの導入を通じ、企業内でのゲーム化を学んでいく期間。将来的には、企業の枠組みを超えたチームメンバー選出やコラボレーションが行われるようになるだろう」とランガスワミ氏。同社はビジネス向けコラボレーションツール「Chatter」や、パートナー企業である米hooplaやIActionableの各種ビジネス管理ツールなどの提供を通じ、「企業におけるゲーム化」を推進していく考えだ。

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