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» 2012年05月14日 11時30分 公開

そして誰もいなくなった実録 日本マイクロソフトが無人になった日(3/3 ページ)

[米野宏明,ITmedia]
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なぜ「テレワークの日」を実施したのか

 日本マイクロソフトは3月19日を「テレワークの日」と銘打ち、地方を含むすべての拠点で一斉にテレワークを実施しました。東日本大震災から1年というタイミングで、被災地への思いを強くするとともに、全社員が「自らのBCPとワークスタイル」を見直す絶好の機会であるとも考えたためです。

 テレワークの日は、午前9時に樋口社長によるオンラインでのあいさつから始まりました。あいさつから1日を始めたのは「業務開始時刻」を明確にする意図もありましたが、社長の口から直接、この日が「特殊な日」ではなく「普段通りに働く日」であることを強調してもらうことが狙いでした。


画像 1000人超が参加したオンライン会議 Lyncを使って音声、ビデオ、PowerPointスライドを一斉配信した
画像 会議中継の模様 英語版と同時通訳、万一のためのバックアップも用意。左端に立っているのが私。社長が熱弁のあまりめくり忘れたスライドを押しに行ったところ
画像 がらがらのオフィス 照明も空調もOFF

 昨年夏、BCPや電力削減といった観点でテレワークを実践した企業が少なからずありました。しかし夏以降も継続的に日常業務をテレワークで実践しているという話は、残念ながらほとんど聞きません。それらの企業にとってテレワークはあくまで次善の策に過ぎず、日常レベルの生産性を期待しない「我慢の日」になっているからです。

 テレワークの生産性がオフィスワークより明らかに劣ると、人はオフィスに向かわざるを得なくなります。なぜなら、ワークスタイルは自分だけの問題ではないからです。今や大半の仕事がコラボレーションを前提としている以上、自分が生産性を落とす環境は、相手や上司に迷惑をかけるという事実、もしくは強迫観念を生じさせます。これを避けるには、テレワークでの生産性をオフィスワークと同程度に高く保つ必要があります。

 テレワークとオフィスワークは、それぞれメリットデメリットがあり、その多くがトレードオフの関係にあります。オフィスワークの感覚をそのままテレワークに持ち込んでも、生産性を高く維持することはできません。しかし、テレワークという環境に適したワークルールやマナー、行動様式、それらを支えるツールがあれば、オフィスワークとは異なる「別の生産性」がテレワークで獲得できるのです。テレワークの日はそれを従業員各人が考え、フィードバックしてもらうための重要な機会とわれわれは捉えました。

テレワーク推進賞 会長賞受賞――モバイルワークの日常化

 3月8日には、日本テレワーク協会が主催する「第12回テレワーク推進賞」の最高位である「会長賞」を受賞しました。日本マイクロソフトのテレワークへの取り組みが、経営効率の向上と改善において高く評価いただいたのと同時に、「日常的に実践しているモバイルワークの一部として在宅勤務形態があり、全社員がデスクに縛られない働き方を実践している」点が受賞理由として挙げられました。

受賞の模様 政策担当ディレクター ステファンと共に

 国土交通省の発表資料「平成23年度テレワーク人口実態調査」によると、所属部門とは異なる場所で一定時間以上働くテレワーカー率は、前年比3ポイント増の19.7%。そのうち自宅で働く在宅型テレワーカーは前年比約170万人増の約490万人でした。ここ数年おおむね横ばい傾向にあったテレワーカー人口および1人あたりの平均テレワーク時間が、東日本大震災を契機として大きく増加した年となりました。

 しかし前述のように、「緊急対応的なテレワーク」は、あくまで生産性を犠牲にした 「我慢の日」でしかありません。現に、東日本大震災後の数日間オフィスをクローズした企業は少なくありませんが、そのほとんどが「自宅待機」運用をしていたと記憶しています。月曜午前に一旦出社させ、指示を出してから午後から自宅待機にしたという企業もありました。

 これは出社を基本スタイルとし、生産性を極度に落としながら出社がかなう日を待った「様子見」だったということです。テレワークが日常のワークスタイルの一部として組み込まれてない以上、こうなるのは当然のことです。ITを含めた業務環境の道具立ての不備はもちろんのこと、働く側もどうしていいのか分からない状態だったのでしょう。のちの報道や知人からの伝聞情報でも、戸惑いや不満をよく耳にしたものです。


 では、日常的にテレワークを行うにはどうしたらよいのでしょうか。次回は日本マイクロソフトが震災前から行っているハイモビリティなワークスタイルへの取り組みを紹介します。

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