コンテナ操作の職人技もデジタル化――M2Mで復権なるか? 鉄道貨物(3/3 ページ)

» 2014年09月11日 07時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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職人技の継承にも活用

 2014年3月のTRACEシステムの更改に際して、同社では全国112カ所の貨物駅の構内ネットワークも刷新した。従来は構内に張り巡らせた無線LANとPHS回線(一部)を組み合わせていたが、これをUQ WiMAXのWiMAX回線に切り替えている。これは駅のネットワーク運用・保守に関わる作業負荷やコストの削減と、大容量データの伝送に対応することが目的だった。

 大量のコンテナや長大な列車を幾つも収容しなければならない貨物駅は、旅客駅に比べて面積が非常に広く、そのほとんどが市街地から離れた場所にある。兒玉氏によれば、構内無線LAN機器の故障はそれほど多くはないものの、現地作業を必要とする場合は、JR常磐線南千住駅に隣接するJR貨物の隅田川駅にある保守拠点から全国の貨物駅に出向いて対応していた。「最寄りの旅客駅からタクシーで駆けつけるようなこともありました」という。

 もう1つの狙いである大容量データの伝送は、フォークリフトに搭載しているカメラで撮影した作業時の映像をシステムセンターへアップロードするためだ。先述のように、巨大なコンテナを貨車へ正確かつ効率的に積載していくには、フォークリフトドライバーの熟練技術を必要とする。

フォークリフトに搭載されている各種装置。RFIDタグやGPSによる位置情報の処理、PCやタッチモニタによる作業指示の伝達と報告、カメラによる映像記録と大容量データを送受信するWiMAXアンテナなど、モバイル技術が詰め込まれた最新鋭のコックピットだ(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム資料より)

 そこでベテランドライバーの作業の様子をカメラで撮影し、映像データを若手ドライバーの技術育成や業務改善の検討に活用することを目指した。撮影した映像データは、基本的にはフォークリフトに搭載しているHDDに保存され、駅の管理者担当者などが必要に応じてWiMAX経由でフォークリフトからデータを取得している。

 なお、WiMAXのサービスエリアは市街地が多いため、貨物駅構内への導入ではUQ WiMAXの協力を得ながら基地局増設なども行った。ネットワーク環境が均一化されたことで、運用効率の改善や保守コスト削減といった効果が見込まれる。同社では今後、連絡用にIP電話を活用したシステムの導入も検討している。さらなる業務改善に向けて映像データや作業データなどの分析活用も推進していくとのことだ。

鉄道貨物の復権を目指す

 輸送事業は景気の動向に左右されやすく、特に数十年にわたって低迷を余儀なくされた鉄道貨物は厳しい立場にあった。JR貨物は2014年春から2016年度を目標とする中期経営計画をスタートさせ、2016年度に本業である鉄道事業の黒字化を掲げる。同社広報部は、将来にわたって事業を継続していくための強固な経営基盤の確立に注力していると説明する。

中期経営計画の達成にはコンテナ輸送の品質向上がポイントに(JR貨物資料)

 IT-FRENS & TRACEシステムは、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)が実施している「MCPC award 2014」で「モバイルM2M特別賞」も受賞した。同社の情報システムは、経営目標の達成にとって不可欠な現場力を支えるための重要な存在となっている。

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