リーダー: じゃあこの案件は、Eさんにお願いできるかな。
Eさん: 僕ですか? はい……でもこのタスクって、予定にないものですよね?
リーダー: 確かにそうだけど、誰かが担当しないといけない案件だからさ。
Eさん: ですが、急ぎの対応が必要でもなさそうですし、僕もいろいろあって……。
リーダー: うーん(以前は普通に対応してくれてたけどな?)……。
このように、はっきりとした争いがなくともスムーズなコミュニケーションができないという状態もStormingに入ります。口では「はい」と言っておきながら、不満げなそぶりを見せるなど、往々にして言動に不一致が起きることが多いです。
リーダーは言動の不一致に気付くようアンテナを常に張ることや、メンバーの様子に違和感を感じたら、それを放置しないという姿勢が求められます。
いずれのケースにも共通して言える対策は、いさかいを見過ごさずに向き合い、本音を聞き出すコミュニケーションをとることです。“なあなあ”にしたり、トラブルを見て見ぬふりをしていると、いつまでたってもFormingとStormingの間を行ったり来たりするだけで、次のステージに進めません。問題を解決する手順は、以下の通りです。
それでは、先ほど挙げたケースBを例に、具体的なアクションを見ていきましょう。
Dさん:このタスクについては、どう進めればよいでしょうか。
リーダー:まずDさん自身が、どう考えているのか教えてくれないかな?
Dさん:すみません。ちょっと今回は時間がないんで、もし答えがあるなら教えていただけませんか? 何でも自分で考えてって言いますけど、何でもかんでもだと困るときがあるんです!
相手に対し「最近コイツ、仕事怠けがちじゃないの?」などと思うかもしれませんが、「いや、何か理由があるのかも」というふうに、問題を切り分けて一度冷静になるのです。“それはそれ、これはこれ”と心の中で唱えるとよいでしょう。
「こちらとしては、自分で考えることで成長してほしいという考えだったのだけど、何かよくないことがあったんだろうか?」などと確認してみましょう。「以前、急ぎで顧客に返答する必要があったときにも“自分で考えて”と言われ、結局顧客に怒られ、迷惑をかけた」など、思いもよらなかったことが聞けることもあります。
「そんなことがあったのか」と認めつつ、以下の例のように、互いが満たしたい物事を共有します。
<リーダー> Dさんの成長を考えて、自分で考えるようになってほしい
<Dさん> 顧客に怒られたり、迷惑をかけたくない
なお、ここで出し合う条件は、利害に差が出るものでなければいけません。仮に
<リーダー> 成長させたいから自分で考えさせたい
<Dさん> 特に偉くなりたくないし、面倒だから自分で考えたくない
という感じだと水掛け論になり、合意点を見出せません。この場合は「なぜそう思うのか(成長したくないのか)」など問いを変えて状況を確認したり、自分が伝えている内容の必要性を説明したりして、相手の理解を深めていきます。その上で改めて合意点を見つけるよう、最初に戻って再度進めます。
求めるものが出せれば、「つまり“自分で考えるけど、顧客に怒られない方法”があればOKということね?」と口頭で合意をとりましょう。
などの案を複数出して検討します。1つでも複数の組み合わせでもOKです。ここで採用された案が、その出来事に対して“チーム内で明文化されたルール”となります。日々の仕事が忙しく、そんなに長い時間をかけて話し合えないという場合、話を一旦切り上げて、後日改めて話し合う時間を取って合意まで進める方法もオススメです。お互いにクールダウンでき、より効果的な案が出ることもあります。
こうしてでき上がったルールこそが“規範”、つまりNormingの状態と言えます。さまざまなルールを明文化することで、徐々にいさかいは減り、Normingに近づいていくでしょう。このルールを守ることで、メンバーは安心感を持ち、成果に集中して仕事に取り組めるようになるのです。
Q:毎日、メンバーから文句や反抗など、大小さまざまなトラブルが出てうんざりです。何かよい方法はないものでしょうか。
A:チーム内が“Storming”の状態になっていると思われます。成果を出すために避けて通れないプロセスなので迎合しましょう。わずかなことでも見過ごさず前向きに対応し、明文化したルールを1つ1つ作っていくことで、メンバーが安心して行動できる“Norming”の状態へと進められます。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
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