毎週3分、情シスドリル コレ1枚で分かる「アナリティクス3.0」即席!3分で分かるITトレンド

IoTの普及とともに、企業が扱うデータは種類も量も急拡大しており、新たな活用にむけた分析の仕方に注目が集まっている。今回は、アナリティクスの変遷をたどりながら、「アナリティクス3.0」と呼ばれるこれからの分析のあり方について解説する。

» 2015年07月27日 07時00分 公開

この連載は

 カップ麺を待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスのみなさんのこんな課題を解決します。


人工知能の普及とアナリティクスが融合する?

「経験や勘ではなく、事実に基づいて、ビジネス上の判断をできるようにすること」

 その手段として、これまでは、「ビジネスインテリジェンス(BI:Business Intelligence)」が使われてきた。ここに来て、人工知能(AI:Artificial Intelligence)が普及し、「アナリティクス(Analytics)」という言葉とともに、その融合が進みつつある。両者はどういう関係にあるのか。『Harvard Business Review』(2014年5月号)に掲載された「アナリティクス3.0」を参考に、独自の解釈を加えつつ、“コレ1枚”にまとめてみた。

コレ1枚で分かる「アナリティクス3.0」

アナリティクス1.0

 1960年代から急速に普及したコンピュータは、企業内のさまざまな業務をデータとして捉える環境を整えていった。このデータを使って、社内業務に関連する分析レポートや管理資料を作成し、経営や業務に関わる意志決定を行う仕組みとして登場したのが、BIだ。

 かつてコンピュータがバッチ処理主体で使われていた時代は、管理レポートを1枚を作るにもCOBOLなどのプログラミング言語を駆使して作成しなくてはならなかった。そのため、プログラミングの専門知識がある情報システムの専門家に依頼するしかなかった。しかし、業務の現場の意図を正しく伝えたり、試行錯誤しながら視点を変えるといった試みを行ったりすると、その都度、彼らに依頼し、説明するのが大変な手間となっていた。

 この状況を打開するためには、情報システムの専門家に頼らなくても、業務の現場や経営者が自ら、管理レポートの作成や業務分析をできるようになればいい。そのために作られた仕組みがBIだった。

 BIでは、業務データから取り出したデータを解析専用のデータベース(データウェアハウス/DWH:Data Warehouse)に格納し、それを使って、管理レポートを作成(レポーティング)したり、さまざまな視点からデータの組み合せを変えて分析(OLAP)したり、統計的な手法でデータに内在する法則や関係を見つけ(データマイニング)たりする作業が行われるようになった。これを「説明的アナリティクス」と呼んでいる。

 企業内の業務システムで生成されたデータを使い、企業活動をデータで説明するための分析を行う段階を「アナリティクス1.0」という。

アナリティクス2.0

 情報システムの適用領域が広がり、業務結果やプロセスのデータ化はさらに拡大した。加えて、ECサイトの普及やマーケティングにおけるWebの利用、SNSの活用、さらにインターネットの普及によって、企業をまたがるデータも扱われるようになり、ますますデータが増大していく。世にいうビッグデータ時代の幕開けだ。そして、これらのデータを生かして、意志決定のきめ細かさや精度を高めるとともに、変化にリアルタイムに即応することで、ビジネスチャンスを逃さないための取り組みが始まった。

 しかし、膨大なデータが集まるようになっても、従来のリレーショナルデータベース(RDB)やDWHのために使われていた列指向データベースでは、リーズナブルなコストで効率よく扱うことができなかった。そこに登場したのが、NoSQLデータベースやHadoopといわれる大規模分散処理システムだ。さらに、ハードウェアの価格性能比が大幅に向上したことと相まって、より高度な分析を行えるようになった。

 このような仕組みで、高度な予測モデルを使って将来を予測し、最適なビジネスプランを策定するなどの領域へと広がっていった。これを「予測的アナリティクス」という。

 そして、社内外の大規模データを使って意志決定の改善とリアルタイム化を進めるとともに、最適なプランニングへと適用範囲を広げた段階を「アナリティクス2.0」と呼ぶ。

アナリティクス3.0

 IoTの普及とともに、企業が取り扱うデータは飛躍的に拡大しようとしている。これらのデータは、業務や経営の効率化、最適化のためだけに使うのではなく、競争力のある商品やサービスの創出、市場の変化に合わせてリアルタイムに連動する広告やサービスの運用などにも活用することで、競争力の拡大や強化を図っていこうという時代に移ろうとしている。

 そのために、リアルタイムなデータを使って、大規模な解析やシミュレーションを行い、最適解を導き出し、再び現場へとフィードバックするサイバーフィジカルシステム(Cyber-Physical Systems)を基盤とした仕組みが作られようとしている。その手段として、これまでの集計方法や統計的アプローチに加え、人工知能を活用していく動きが始まっている。

 これらの手段を駆使し、システム自身が判断を下し、現場への指示を行う「指示的アナリティクス」の段階を「アナリティクス3.0」と呼ぶ。

 アナリティクスの進化は、これからも続くだろう。その牽引役は人工知能になる。アナリティクス2.0までの時代は、最適モデルの設定や結果の解釈、意志決定は、人間が経験と統計学知識で行ってきた。いまや人工知能が、自ら行おうとしている。データサイエンティストや現場管理者が行っていた仕事も奪うかもしれない。そんな変化の中で、どう折り合いを付けていくかが、今後の課題となっていくだろう。

著者プロフィール:斎藤昌義

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 日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィールはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤリティフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら


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