プロジェクト用のカートは2種類を用意している。屋外のシェアステーションで使われるカートには、車輪の回転数から距離や時間、速度を割り出し、それをBluetoothで送信する機能を備えた自転車用のデバイスを装着。利用者がデバイスのボタンを押すと計測がスタートし、ステーションに戻ってボタンを押すと計測を終了し、Bluetooth経由でステーションに設置したRaspberry Piにデータを送信する。Raspberry Piに集まった利用動向のデータはMicrosoft Azureに送られ、Power BIで分析される。
もう1つは、タブレット端末のSurface 3を搭載したカートだ。イベントなどでの利用を想定しており、各種のデータ計測機能に加えて、ビーコンを使ったエンターテインメント機能を用意しているのが面白い。ビーコンを設置した店舗の近くを通ると、店のオススメ情報やお得情報がsurfaceの画面に飛び込んでくるようになっており、街を歩けば歩くほど、街を楽しむための情報が集まってくるのだ。
店側の情報発信にはInstagramを使っており、店舗側が投稿した写真をクラウド側(Azure)からチェックし、更新された最新情報をビーコンを通じて配信する仕組みになっている。お得情報の写真撮影や情報発信にもシニアが参画しているというSurface 3を搭載したカートからは、歩いた時間と距離、速度に加え、どの店にどれくらい立ち寄ったのか、どんなルートで街歩きをしたのかといったデータも取得できる。こうしたデータもAzureに集めて分析し、今後の活動に役立てていく計画だという。
初披露されたタブレット付きのカートについて、街歩きを体験したシニアに感想を聞いてみると、「地図やイベント情報を表示してほしい」「見やすい大きさに画面を拡大できるようにしてほしい」「タブレットを付けた状態でも簡易的な椅子として使えるようにしてほしい」などといった要望が相次いだ。プロジェクトでは、こうした意見を反映させながら、健康増進につながる新たな活用法を見つけていく考えだ。
一人暮らしの高齢者が急増し、孤独死が社会問題になっている中、シニアが元気に暮らし続けるためにはどうすればいいのか――。これは日本だけでなく、多くの先進国が抱えている問題だ。「体力が弱ったシニアに、もう一度街歩きを楽しんでもらいながら気持ちも若返らせる」――そんな富山市の取り組みは、シニアの健康問題を解決する大きなヒントになりそうだ。
ホコケンIoTプロジェクトのメンバー。surface付きまちなかカートのお披露目には、富山市長の森雅志氏、三協立山代表取締役社長の山下清胤氏、富山大学学長の遠藤俊郎氏、日本マイクロソフトCTOの榊原彰氏らが顔をそろえた取材協力:日本マイクロソフト
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