こうして2年前にTableauを導入し、二瓶さんの分析作業の効率は大幅に向上した。グラフの作成など、作業の時間は10分の1以下になったという。
「Excelでやっていたころに戻れと言われたら、泣いて拒否しますよ(笑)。以前はグラフを作るのにいっぱいいっぱいで、『あとは行間を読んでくれ』という感じで提出することもありましたが、『これは半日かかる』という作業が一瞬で終わるようになって、出た結果をどう理解してもらうか、資料の表現や説明の仕方を練ることに時間をかけられるようになったのが大きいです」(二瓶さん)
効率が上がり、レポートのクオリティも上がったものの、Tableau導入直後はデータ分析の依頼が激増し、処理が追い付かない状態だったと二瓶さんは話す。
「Tableau自体は難しいものではないのですが、最初から自分でやってみようと思う人は、なかなかいません。一方、人間は知的好奇心が旺盛な生き物で、結果がすぐに出るようになると、もっといろいろなことが知りたくなるものです。
例えば『1日に来てるお客さんの半分が、こういうタイプのお客さんだ』みたいな話をすると、『じゃあ、その内さらにこういうタイプって何人ぐらいいるんだろう?』みたいな疑問が次々と出てくる。だから、最初は分析すればするほど、新しい分析の要求が増える状況になりがちでした。定常的に確認する項目がある程度固まるまで、リクエストが多くなるのは仕方ないことだと思います」(二瓶さん)
データ分析の結果をゲームの担当者に渡す際、二瓶さんは『新イベントの開催』『難易度の調整』といった施策もセットで提案するという。ビジネス上の効果を生むには必要なことではあるが、それには実際の業務――つまり、各ゲームの中身を知らないと効果的な提案は難しい。
「分析の結果を読み解くのも、エネルギーが要ります」と話す二瓶さんは、もともと大のゲーム好きだったが、分析を担当するようになってからは、よりゲームに時間を費やすようになったそうだ。「私が分析するとしたらどこを最初に見るかな、と考えながらプレイして、いざそのゲームのチームから相談が来たら『待ってました!』みたいな感じで対応します」と話す表情に、好きなことが仕事になっている充実感が感じられた。
そんな彼女の活躍により、カプコンではデータ分析をする文化が着々と醸成されつつある。はじめは1人ぼっちの“分析担当”だったが、『ドラゴンズドグマオンライン』や『モンスターハンターフロンティア-Z』をはじめとするオンラインタイトルでは、Tableauを使って複数人のチームで分析業務を行う体制ができつつあるそうだ。
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